「経営人事改革の視点」 2015年12月号 KPI(重要成果指標)について

数値目標の設定

企業が戦略を立案し、それを計画レベルに落としていく際に、いくつかの数値目標を設定することが一般的です。それは、売上であったり、利益であったり、あるいは特定の商品の販売シェアだったりします。そして、より具体的な計画において、会社目標を各部門や個人に展開し、目標の連鎖を描いていくことになります。

一方で、企業活動は個人の行動の集合体であり、目標は個人の行動を促すものでなければならないという事情があります。最終的な目標が売上高であったとして、個人の仕事も毎日売上を積み上げていくスタイルのものであれば、会社目標を個人のところまで分割配分していけばいいのですが、売上の実現までに数週間から数ヵ月の時間がかかるような業態の場合、得意先や新規顧客への訪問件数など、毎日の行動に直結した成果目標に変えていく必要があります。

この訪問件数のような指標を、KPI(Key Performance Indicator)=重要成果指標と呼びます。そして、経営戦略を明確に描く企業においては、最終的な目標やKPIもきわめて戦略的に設定する傾向があります。

KPIの例

例えば、自社の「サービス」のこれまで自社でも気づかなかった価値(実はたくさんあります)を発見した結果、サービスの単価自体を上げていくことを当面の成長戦略として選択した場合、自社サービスの価値に光を当てたプレゼン型の営業を行う必要があります。その場合、営業課のKPIは、プレゼン型営業の実施件数(キーパーソンに正式にアポイントを取った面談のみカウント)とすることが効果的かもしれません。

人事を担当する総務課において、この戦略に関連したKPIを設定しようとすると、これは中々難しい問題です。まず組織ミッションが深いところで認識されていないと、うまくいきません。そのミッションの一つが、「社員の成長と働くことの満足度向上を支援することで、会社の成長に貢献する。」ということだったとすると、プレゼン型営業を行うための、「教育」をしくみ化することが浮かびます。そしてKPIとしては、プレゼン型営業を行うためのカリキュラムを作成し、その「年間延べ受講時間」とすることも可能です。

その教育は、営業課の社員には手厚いものになりますが、他の社員に対しても、基本的な戦略を共有してもらわなければならないので、基礎的カリキュラムを作成して受講してもらうという必要がありそうです。

戦略・ビジョンの共有

KPIは、企業の置かれた状況を理論的に分析すれば当然に出てくる値ということではありません。もちろん、理論面の検討は必要ですが、半分以上は「意思」の問題だからです。KPIの前提として、自分達はこうなりたいという企業の成長戦略・ビジョンがあります。成長ストーリーといってもいいと思います。

重要な点は、その成長ストーリーを全社員が理解・納得し、自分のミッション(職種や組織のミッション)を前提としたときに、そのストーリーを実現するためにどのような貢献ができるかを考えることです。その貢献を表わす何らかの数値が発見できればそれがKPIになります。そして、そのKPIの達成を求めることが、成長ストーリーを前進させることにつながります。つまりKPIは戦略を全社で共有し、それを実行するためのツールということもできます。。

なお、KPIを数多く設定すると、焦点がぼけます。一つないし2つ程度にしぼって、その意味を他部署の人間も理解し、それを応援していくという方向が望まれます。そのようにすれば、評価を上げるためにKPIだけを利己的に追い求めるという雰囲気は少なくなります。

要約すると、KPI設定の手順としては、成長戦略と組織(職種)のミッションを明確にし、それを進めるために各部署(職種)がどのような貢献が可能かを考え、その貢献度合いを表わす指標としてKPIを設定するということです。そして重要なことは、戦略、ミッション、指標(KPI)が全体として一貫性を保たれるということです。

会社全体が進むべき方向性、ベクトルを合せ、戦略を遂行するための議論を徹底的に行うことができれば、効果の半分は達成されたといってもよく、仮に設定されたKPIが輝かしいものに見えなかったとしても、さして気にすることはありません。

以上