「経営人事改革の視点」 2017年11月号 3つのマネジメントサイクルと人事制度

3つのマネジメントサイクル

企業には、時間軸の異なる3つのマネジメントが必要です。

一つは、日常的な短期のマネジメントで、私はこれを「短サイクルのマネジメント」と呼びます。日常の業務管理が中心で、上司の指示、アドバイス、教育などがその手段となります。

次が、「中サイクルのマネジメント」で、半年あるいは1年単位のマネジメントです。

具体的には、経営統制、事業計画・予算管理、人の観点では、人事評価制度、目標管理制度などがこれにあたります。

時間軸として最も長いのが、「長サイクルのマネジメント」で、将来ビジョンや長期戦略、それに呼応した社員のキャリアパスなどを策定・検証していくプロセスで、それらをわかりやすく示し、十分に説明することが具体的対応となります。

長サイクルのマネジメントのテーマである将来ビジョンや長期戦略などのあるべき姿は、日常的な短サイクルのマネジメントを通じて実現していくわけですが、現状とあるべき姿のギャップを埋めるための「介入」となるのが、半年・1年単位の中サイクルのマネジメントです。それは日常業務に対して方向性を与え、あるべき姿へ向かうベクトルを形成する作用を果たします。

つまり、中サイクルのマネジメントは、短サイクルのマネジメント、長サイクルのマネジメントがあってはじめて機能する手段なのです。事業計画や人事評価制度を作って運用すれば良い結果がでるということにはならないのです。逆に、短サイクル・長サイクルのマネジメントがきちんと機能していて、それに中サイクルのマネジメントがかみ合うと、企業は成長していくことになります。

バーチャルな中サイクルのマネジメント

中サイクルのマネジメントの運用は簡単ではなく、その運用はどの会社でもなかなかうまくいきません。

短サイクルのマネジメントにおいては、日常的な業務指示、アドバイス、報連相などが執り行われますが、これらは少なくとも社員が現場的に体感できる類いのものです。

長サイクルのマネジメントは、企業として何を実現するかを定義した将来ビジョンなどがテーマであり、社員にとって共感や感情移入が可能なもので、場合によって自分の人生を重ね合わせて考えることができるリアリティをともなったものです。

しかし、中サイクルのマネジメントは、きわめてバーチャルな世界です。目標となる年間の売上や利益などの数字は、理屈と計算で組み上げていくいくもので、体感できるようなものではありません。

人事評価制度も同様です。評価基準とされる成果指標は、会社全体の年間の目標数値をブレークダウンしたものですし、能力や行動に関する評価も、普遍的な内容にしようとすればするほど、きわめて抽象的なものになります。

中サイクルのマネジメントをきちんと機能させるためには、短サイクルのマネジメントを充実させなければなりません。また、長サイクルのマネジメントが実質的に欠落しているケースが中小企業には多いのですが、少なくとも数年後あるいは10年後において、どのような姿を目指すのかを描いてみる必要があります。

その上で、中サイクルのマネジメントを成功させるには、人事評価制度などの人材マネジメントプロセスを計画的に運用する必要があります。その際のポイントは、制度の形式よりも、上司と部下とのコミュニケーションを実のある心の通ったものにすることです。

期待値、期待する行動を明確にしてそれに関して上司も部下も納得して合意する。定期的にコミュニケーションを取る。経過をフォローし、生み出された成果について評価を行ってそれをフィードバックする、といったマネジメントサイクルをきちんと回していくことが求められます。

3つのサイクルのマネジメントを整合させることが、企業の持続的な成長発展の必須条件であることを認識する必要があります。

以上