「経営人事改革の視点」 2018年7月号 関わり合うマネジメント

人間の本性から考える

企業活動とは、企業を構成する人材の活動の総合計です。

企業活動を望ましいものにするためには、人材の行動をあるべき方向に導いていく必要があります。

しかし、人間の行動に影響を与え、それを変えていくのは容易ではありません。短期的な対応ならばともかく、持続的・長期的に人間の行動をある方向に導いていくには、一定の合理性が必要になります。なぜなら、人間の行動を無理矢理変えることはできないからです。人間の本性にあった形での変化であれば、合理性がありその変化は定着していくことになります。

ここで、人間の本性は何かを考える必要がありますが、思い切って数十万年前の人類の歴史の原点にさかのぼることで、正解に近づいていけるのではないかと考える次第です。

人間を含む生物は、環境に適応できる形質を持った種だけが生き残り、さらのそれらの形質が進化してきたわけですが、肉体だけでなく「心のメカニズム」も進化によって発達し現在の特性を持つに至っております。

人間の「心のメカニズム」の一つに、「お節介さ」というものがあります。

実は、人間をチンパンジーなど他の高等動物と峻別する重要な性質が、この「お節介さ」なのです。人間だけがお節介な利他行動をとります。

チンパンジーは、毛繕いや子の世話などの利他行動を行いますが、ざっくりいうと遺伝的にプログラムされた行動しかとりません。

それに対して人間は、いろいろな状況で、家族でない他者に対しても、その人の気持ちや何をしようとしているかの意図を読み取り、手助けしよう、教えてあげようとします。こうした利他行動は、早くも1歳半くらいの赤ちゃんのときから始まるようです。

お節介な利他行動によって、個々人の結びつきが強くなり、集団としての機能が向上します。人間は集団で協力することできびしい環境に適応してきたので、こうした集団の機能向上という効果には大きな意味がありました。また、見返りを求めずに、教え合うことによってさまざまな能力が加速度的に向上していくという絶大な効果もあります。

関わり合うマネジメント

「お節介さ」を企業の人材マネジメントに置いてみると、それは「関わり合うマネジメント」になります。

企業のスタッフ同士が、積極的に関わり合っていく。困っていそうな社員がいたら、まわりの人間は放っておかずに、どうしたのか聞いてみる。上司→部下、同僚同士、部下→上司などさまざまな関係性があるわけですが、礼節は踏まえながらも、状況や意図を読み取り、力になろう、手助けしようとする姿勢が求められます。

OJTなども、「関わり合うマネジメント」の良い例で、これも、他者を手助けし教えてあげようとする性質を人間が持つからこそ、長期的に機能してきたのです。

世間一般的には、「お節介」というと、昭和チックなイメージがあって、時代遅れなもののように思われるかもしれません。

しかし、「お節介さ」は数十万年にわたって人類の発展を支えてきた特性であり、人間のDNAに刻み込まれた心のメカニズムです。程度の差はあっても、この傾向性を持たない人間はいないのです。

現在、他者にはあまり関わらないことがスマートであるという風潮も確かにあります。もちろん、不作法で独りよがりな関わり方は相手にとって迷惑でしかありませんので、こうした行為は避けなければなりません。注意すべきは、マイナスを避けるために本来あるべきプラスの行為までも否定してしまう過剰反応です。

あるべき「関わり合い」が実現していけば、低レベルで独りよがりな関わり方は自然と淘汰されていきます。今企業で求められているのは、積極的な「関わり合うマネジメント」ではないでしょうか。

以上