「経営人事改革の視点」 2019年3月号 行動の3ステップ構造に働きかける

◆行動の構造を見る

企業活動とは経営者・社員の行動の総計であり、マネジメントの課題は、社員の行動をあるべきものに近づけていくことです。

前回のコラムでは、行動を変えるにはその原動力である情動への働きかけが欠かせないということを書きました。これは行動を人間の内面から捉える視点によるものです。

今回は、人間の行動について、下図のように前後の要素を含めた3つの構成で捉え、その全体に対して働きかけることによって行動に変化を起こしていく外的アプローチについて記述します。

 ある行動が起こされる場合、行動を起こす原因となる事象などの「状況」があります。そして、「行動」を起こした後には、それによる「結果」が続きます。

たとえば、喉が渇いたという「状況」があり、お茶を飲むという「行動」があり、それによって渇きが癒やされるという「結果」が生まれます。これは、きわめて単純な例ですが、行動はこのような3つのステップで展開されていきます。

ここでの重要な原則は、行動にはそれに先立つ「状況」があること、そしてその状況に対して取った行動を今後繰り返すかどうか(再現性の有無)は、行動の結果が大きく影響するということです。

マネジメントにおいては、社員の行動が望ましいものになるよう、つまり取るべき行動が取られやすくなるような状況を作ることが課題となります。

たとえば、営業においてはどのような行動を行うべきかを、営業社員には理解させなければなりません。そのためには、教育や適切な業務指示を行う必要があります。そうしたことを行わずに結果を期待しても、行動の質が伴わないのでうまくいきません。

作業環境も、「状況」として行動に影響を与えます。

たとえばパソコンを使って事務作業を行う職種の場合、机の配置によって業務効率が大きく変わります。向き合って机を並べ作業を行う配置では、ディスプレイが他人には見えにくく、作業状況が知られにくいという状況が生まれます。極端な場合、ネットサーフィンをしていても気付かれません。そのような配置と、全員が壁を向く形で配置され、ディスプレイが誰からも見えてしまう状況では、生産性が大きく違ってきます。

行動マネジメントの重要なポイントは、望ましい行動が生まれやすい状況を作ることです。

 

◆結果が行動を強化/弱化する

もう一つの重要なポイントが、行動に続く「結果」です。行動によって生まれた結果が、その人にとって好ましいものであれば、同じような状況において、その行動が再び取られます。つまり「結果」によって「行動」の再現性が強化されたのです。その逆が「結果」による「行動」の再現性の弱化で、好ましくない結果が生じたことにより、その行動は再び取られにくくなります。

行動の結果がその再現性を強化/弱化するというのは、多くは無意識レベルで起きる自動的なプロセスで、それだけにその影響は簡単に排除できません。

たとえば、社員が社長に悪い情報を報告した際に、社長の機嫌が悪くなるという「結果」が生じるとすると、そうした行動を取るたびに、社員には好ましくない結果がもたらされます。その結果は、「悪い情報を報告する」という社長にとって必要な行動を弱化し、結果として社長には正しい情報が上がらなくなってしまいます。

そうならないためには、社長は悪い情報を報告してきたという社員の行動に対して、社員にとって良い結果を返さなければなりません。つまり、その行為に対して感謝するということが正しい対応になります。

このように、社員の行動マネジメントにおいては、行動の3ステップ構造に働きかける視点を持ち、それを実行することが大切です。