「経営人事改革の視点」 組織が価値を生み出せないのはなぜか

◆スーパーボランティア

昨年8月、山口県で2歳の男児が行方不明になるという事件が起きました。行方不明になったそのあたりには、山や沢、ため池などもあり、警察と消防が捜索にあたったものの、3日間捜しても見つかりませんでした。捜索には、延べ550人が投入されたといいます。

ところが、4日目の早朝、尾畠春夫さんという当時78歳の「スーパーボランティア」が一人で捜索を開始したところ、わずか30分で男児を発見したのです。幸い男児の健康状態はおおむね良好でした。この事件はマスコミでも大きく取り上げらました。

男児は、最後に姿が確認された地点から500メートルほど山の中の沢を上ったところにいたのです。

捜索にあたった警察関係者は、「2歳になったばかりの体力を考えると、山を登るよりは行方不明になった現場周辺や危険箇所を徹底して捜索した」とした一方で、尾畠さんは「小さい子どもは下がるのではなく、上っていく習性があると考えていた」と話したそうです。

延べ550人が投入されても見つからなかった男児が、78歳男性の30分の捜索で見つかり、その対比があまりに極端で話題になったのです。

捜索隊のリーダーは、2歳児は山に入らないという前提を置いていました。また、近くのため池に転落した可能性があるとして、潜るなどしての捜索も行われたとのことですが、これは死体を捜すことを意味しています。初動においては、生きている前提で捜すべきで、この点では明らかに目的から逸脱した捜索が行われており、地元住民からも、山の中を捜索すべきだとの指摘がされていたといいます。

それに対して、尾畠さんの仮説や行動は、小さな子どもに思いをはせ、五感をフル稼働した結果のものであったと考えられます。この結果は、偶然では済まされない内容を含んでいると思われます。

もちろん、捜索隊の取った方法を全否定することはできませんが、何を達成しようとしているかをよく考えず、そして五感を働かせることもなく、機械的に人的資源を投入し続けることは、この例に限らずめずらしいことではありません。

 

◆日本の企業は機能しているか

大企業が大きな資金と人的資源を投入しても解決できない高いレベルの課題を、少人数のベンチャー企業が、興味とプライドとチームワークによって解決してしまうというのは、世の中に転がっているストーリーです。この対比は、延べ550人の捜索隊とスーパーボランティア1人の例に似ていないでしょうか。

日本の企業がかつてのような存在感を世界で発揮できなくなったと言われています。特に、大企業の凋落が目立ちます。大企業は、パワーの点では優位性を発揮できますが、社員一人ひとりの力を十分に発揮するという点では、むしろマイナスになっている可能性があります。

優れた経営手法であるアメーバ経営は、哲学的背景やさまざまな方法論を備えたものですが、根本的な作用としては、大きな組織を小さな集団に分割して、自律性と一体感を高めることにあると考えられます。

もちろん、大きなものを小さくするにも限界があるし、規模だけですべてが解決するものでもありません。企業という人間集団にあって、どのようにしたら個人の個性や能力が引き出せるか、どのようにしたら生命力が刺激され、活力が生まれてくるのかを考えなければなりません。

もう一つ忘れてはならないのは、達成すべきことに強く思いをはせるということです。

狩猟民が狩りをするにあたって、獲物を模倣する行為を行い、その動物と感覚的な同一化を図ることがあります。

何を達成しなければならないのか、徹底して考えるだけでも、結果は違ってくるはずです。その際、せっかく人間に備わった五感を使うことを忘れてはなりません。

以上