「経営人事改革の視点」 2015年11月号 社員が言いたいことを言えない会社は伸びない

伸びる企業の特徴

成長している企業にはある共通点があります。それは、社員が言いたいことを言える雰囲気があるということです。そして、危なっかしいけれど、とにかくやってみるという傾向を持っています。

決まったことを正しく遂行することだけが求められる職場であれば、社員は余計なことは言わずに、言われたことだけを黙々と行っていれば良いでしょう。しかしそうした業務は、それほど付加価値の高い業務ではない可能性があります。今や、商品やサービスの量的側面は十分に満たされています。サービス経済化が進展し、プラスアルファの価値の提供が求められている現状においては、同じことの繰り返しでは顧客の支持を失うことは明白です。

市場の声を聞くこと、より良い商品・サービスの提供を行うこと、そのための創意工夫を行うことが必要であり、それを経営者だけが行なうのでは限界があります。最終的に顧客に接する局面はもちろんのこと、そこに至るさまざまな工程にコミットしている社員の創意工夫、主体的な取り組みがあって始めて大きな顧客価値を実現することが可能となります。

グーグルの20%ルール

創意工夫は、それに取り組む人間にとって、本来面白いものです。遊びに夢中になっている子供は、そうした面白さを味わっている状態にあると考えられます。

さまざまな企業が、社員の創造性を引き出すための工夫を行なっています。例えば、グーグルの開発者に対する20%ルールはその顕著なものです。20%ルールとは、「勤務時間の20%は、通常の職務を離れてグーグルのビジネスに関係すると思われる自分のやりたいプロジェクトに取り組んでよい。日常業務に支障が出ないかぎり、20%ルールをいつ実行するかは自由。」というものです。Gメールやグーグルマップなどの画期的なサービスは、20%ルールの活動により生み出されたと言われています。

人間誰しも伸び伸びと行動したいもので、働くことにおいてもそれは例外ではありません。企業でそれがなされにくいのは、決まったことを効率的にやることだけを求めるマネジメントにあると思われますが、悩ましいのはそれが一面では正しいからです。たしかに、自由な発言や行動は、定型的なオペレーションの阻害要因になることがあります。

経営者の意識改革が必要

社員を一つの歯車と見て、ローコストオペレーションだけを求めるのであれば、社員に創造性を求める必要はないのかもしれません。しかし、付加価値の高いビジネスを目指すのであれば、社員の創造性を阻害する要因の除去に取り組む必要があります。

人間は、自分が得たいと思うものを得ようとして行動し、得たくないものを避けようとして行動します。発言や提案、行動に対して、それを否定するようなリアクションが生まれれば、やがてそうしたことをしなくなります。わが社の社員は何も提案しない、会議でも積極的な発言をしないということを嘆く経営者がいますが、それは、そうした局面における経営者や経営幹部のネガティブな反応による結果であることが多いのです。

社員の創意工夫を引き出したいのであれば、社員の発言や行動に対する心理的な自由度を設けなければなりません。もちろん、何もかも自由ということではなく、その限度が明確であることがポイントです。何を言っても良いけれど、対案のない否定的意見はだめであるとか、約束したことや一定のルールを破った場合はきちっと罰せられるとか、そうした境界が明確であることが逆に心理的な自由度を生むのです。「空気を読め」というのは最悪です。それは、その場の人間の顔色を見て判断しろということなので、創造性とは真逆の方向性を示すものだからです。

会社が、言いたいことが言える雰囲気にないとしたら、経営者はそれに対して相当の危機意識をもって改革に取り組むべきと考えます。

以上