「経営人事改革の視点」 社員が孤独感を持たないようにするために必要なこと

◆孤独な現代人

ネット上で、ある「漫画」が話題になりました。

大学を卒業し社会人2年目の主人公が、ある日、SNSで大学時代に仲の良かった友人が結婚したことを知ることになります。その結婚式には、大学の他の友人たちは招かれていたので、主人公は非常に落ち込みます。そして、続けてショッキングな出来事が起きます。他の友人たちが招待されている別の結婚式にも、自分が招待されていないことを知り、それによってさらに落ち込んでしまうのです。

たったこれだけの内容ですが、非常に多くの共感を呼んだとのことです。

現代人は基本的に孤独です。

人間は群居しなければ生きられない、つまり集団において他者とつながっている感覚がなければ生きていけない存在です。他者とつながっているという実感が持てない場合、それに対する本能的な警告として孤独感が発せられると考えられています。

人間の本能は、基本的に狩猟採集時代に最適化した状態で現在に至っています。狩猟採集時代では、集団から排除されるのは死を意味したので、そうした事態に陥りそうになったときに、孤独感を発し事態を修復するよう警告するメカニズムが生まれたのです。

孤独感を持つと、注意力をはじめとする自己制御力・調節力に支障を来し、認知能力などの思考や行動にも悪い影響をもたらすことが研究によって明らかになっています。自己制御力の低下は、過食行動やアルコール、薬物の濫用につながることもあります。注意力や認知能力が低下すれば、業務の効率は当然悪くなります。

 

◆企業の対応策

孤独感は、人間にさまざまな弊害をもたらすのですが、人間集団である企業は、孤独感をはじめとする社員のメンタリティに強い影響を与えます。その程度は、趣味のサークルのような組織などとは比べものになりません。

企業が社員のメンタリティに負の影響を与えると、社員の思考や行動にネガティブな影響を与え、業務効率を低下させます。それに長時間労働やハラスメントなどの要因が重なると、うつ病などのメンタルヘルス障害を引き起こす恐れさえあります。

長時間労働やハラスメントなどをなくすことは当然ですが、それだけでは十分とは言えません。企業が、社員の孤独感を減らすために積極的に行えることがあります。

基本的な2つの対応策を示します。

第1は、社員同士が「親しく知り合うこと」で、そのための工夫をすることです。当たり前のことのようですが、実はこれがきちんとできていないことが多いのです。もちろん、社員同士、名前や所属などは知っていますが、それぞれがどのような人なのか、納得感を持って把握しているケースは少ないのです。人間の本能としては、知らない人=敵という図式が成り立ちます。親しく知らない人の中で働くことは、警戒心が解けていない状態で働いているという状況とも言え、ストレスが生じやすくなります。

もう1つは、第1のこととも関連しますが、社員が人間対人間として向き合う状況をつくることです。往々にして、会社では立場や肩書きで話し、関係性が作られます。もちろんそれぞれの役割はありますが、それ以前に、社員は全人格を持った人間同士であることが重要です。なぜなら、立場でしか存在しない社員は、その範囲内でしか発想やモチベーションが持てず、人間が持つトータルな能力を発揮できないからです。

人間対人間の状況を実現するためには、なるべくリラックスし、肩書きや役割を超えた会話ができる環境を作る必要があります。呼びかけるのも「◯◯課長」ではなく、「◯◯さん」とするのが望ましいと考えられます。そうしていない会社にこの方式を導入するのは、トップの強い意志がないと不可能ですが、そうする価値はある施策です。

社員同士が親しく知り合うこと、人間対人間として向き合うこと、この2つは社員の孤独感を低減し、生産性を向上させます。シンプルですが、根本的な施策としてお勧めするものです。