「経営人事改革の視点」 2014年4月号 社会環境と「人」「若者」の変化

豊かな社会

日本の社会は基本的に豊かな社会です。ここ20年間経済が停滞し、失われた20年とも言われてきましたが、食べていけない社会ではありません。そして、昨今はアベノミクスの効果もあり、景気は好転してきています。

サービス経済化が進んでいるのも大きな特徴です。経済社会の発展により高度化、成熟化が進み、その結果、第3次産業の就労者が増加するというものです。日本においてもサービス経済化は急速に進み、2010年調査では全就業者の割合で第3次産業が7割を超えました。

サービス経済化が進むと、第3次産業に限らず、第1次産業、第2次産業においても顧客志向、プラスアルファの価値を提供する傾向が強まります。プラスアルファの価値の提供は、人によって大きな差が生まれるため、経営資源の中でもモチベーションの高い人材力が最も重要と認識されています。

現代の若者の特徴

企業は、持続的な成長を担保するためにも、モチベーションの高い有能な若手社員を必要としていますが、一方で若者の扱い自体に困っているケースが少なくありません。それは、現代の若者の特徴に対する認識不足から生じている面があります。

現代の若者の多くは、豊かな社会に育ち、一方で経済・社会の発展を実感しておりません。その結果、「働いて豊になりたい」、「就職して車を買いたい」といったかつて一般的に存在したモチベーションが極めて希薄になっています。

その代わり、自分の思い描くキャリアや働き方を実現したい、成長したいという思いが強いのです。そして、進路や会社の選択に対して、家族や親密な仲間の承認を得たいという強い欲求があります。

そうした思いは、若者が「親密圏」と呼ばれる閉じたコミュニティの中で成長してきたことと無縁ではないと考えられます。大家族から核家族へ、地域社会の交流の減少、通信手段の発達によるコミュニケーションの内向化などを要因とし、昔の人間が有していたほどの「社会性」を持ち合わせておりません。

そのため、自分の描くキャリアや成長を実現したいという思いが、根拠のない単なる憧れやムードであることも少なくないのです。そして、浮わついた思いだけで入社した場合、早期の離職につながりがちです。

ケアやフォローが必要

新卒を含めて、20代の若者に対しては、企業はまだまだ未熟で社会的な存在になりきれていない者としてとらえていく必要があります。それは、現実を直視するということで、「甘やかす」こととは違います。十分に社会性を持った「大人」としてとらえると、本人も会社も実態とのギャップに苦しむことになってしまうのです。

まず、入社選考の段階から、企業で働くこと、具体的に仕事として行うことの現実を十分に伝えることです。人間は、就職などの人生の重要な選択にあたっては、あいまいなものより、大変であっても十分に理解・納得できるものを選ぶ傾向を持っていますので、現実を伝えることで入社辞退につながることはそれほど多くないと考えられます。むしろ「こんなはずではなかった」という感情による離職を防止する効果の方が高いと考えられます。

また、新卒でも中途入社でも、入社受入体制をきちんとすることが重要です。入社したとたんの「アウェイ感」は、ショックが大きく、後々まで尾を引きます。そして業務開始後半年間程は、配属部署に丸投げするのではなく、研修名目で月に1回程度は経営層や人事担当部署の人間による面談を行うことが望まれます。これは、「あなたの存在を忘れておらず、見守っていますよ」「あなたのキャリアについても考えていますよ」というメッセージを発する行為です。半年経過後においても3年間は、同様の面接を3カ月に1回程度行うことが望ましいと考えられます。

現代の若者は、昔ほどの社会性を身につけていないため、「手がかかる」のですが、適切に導けば、純粋に成長を望む分だけ有能な戦力になる可能性も高いのです。

以上