「経営人事改革の視点」 2015年10月号 目標は小分けにした方がいい理由

行動の強化・弱化

私たちの行動は、行動を起こした直後に何が起きるかによって大きく影響されます。例えば、喉が渇いた時に、ビールを飲んでとても美味しければ、同じような場面でその行動が繰り返されます。逆に、飲み物が美味しくなければ、それ以降同じ行動はとりません。

「喉が渇いた」という行動を起こす直前の状況、「ビールを飲む」という行動、「美味しかった」という行動直後の結果の3つがセットになって、人間の一連の行動が形作られて行きます。人は、行動直後の結果がその人にとって好ましいものであれば、その行動を繰り返します。逆に、結果が厭わしいものであればその行動を繰り返す確率が下がります。良い結果が行動を繰り返させることを、「行動の強化」といい、悪い結果が行動の再現性を弱めることを、「行動の弱化」といいます。

行動の強化、弱化は、行動の直後に起きる結果により引き起こされます。結果の重大性よりも、結果が確実に起きるかどうか、即座に起きるかどうかが重要な要素になります。こうした原則は、行動に関する因果法則を明らかにしていこうとする「行動分析学」と呼ばれる実践的な心理学で明らかにされたものです。

ルール支配行動

結果による直接的な行動の強化、弱化の関係性だけでなく、一定のルールに影響される「ルール支配行動」と呼ばれる原則も存在します。「ルール」とは、「〇〇したら、□□が起きる」といった関係性をいい、明文化されたものだけでなく、慣習的に成り立っているものを含みます。

ルールの一つの例として、人事評価制度があげられます。人事評価制度では、評価項目ごとに良い結果を出していけば、次の賞与や昇給において満足な結果が得られるといった内容が定められているのが一般的です。賞与や昇給は、今日起きるわけではなく、何ヶ月も先のことなので、強化・弱化の原則だからいうと、行動への影響は小さくてしかるべきですが、この点をどう考えればいいでしょうか。

行動分析学では、ルール上悪い結果をもたらす行動をとった場合に、将来における悪い結果を想起して「後悔=嫌な気持ち」が即座に沸き起こるため、その結果がルール上悪い結果をもたらす行動を弱化することになる、と考えます。

目標は小分けにすべき

夏休みの宿題は、最終日近くにならなければ、中々手が着かないものです。宿題をやらないでおくと、「ルール支配行動」の原則からすると、後悔の念が湧き、宿題をほっておいて遊んでしまう行動が弱化されるはずですが、往々にしてそうならないのはどうしてでしょうか?

それは、1日遊んだくらいでは宿題をやりとげるという結果に大きなダメージを与えないからです。その程度では挽回が効く、と思えるから後悔の念が湧きにくいのです。もし、宿題の提出が3日ごとにあったとしたら、1日遊んでしまうことは、時間というリソースの3分の1を浪費することになり、相当なダメージ(=後悔)が生じます。それにより、「宿題をやらずに1日遊ぶ」という行動が弱化されます。

宿題の提出が3日置きにあっても、最終日つまり40日後にあっても、宿題という義務の構造に違いはありません。確認のタイミングが違うだけなのに、結果としてその遂行度には大きな違いが生じることになります。

会社の業務においても、全く同じことがいえます。半期の目標を半年に1回チェックするのでは、1日の行動が結果に与える影響の割合が小さすぎます。目標をできるだけ小分けにして、1日の行動が結果に与える影響を大きくすることで、ルール支配行動を強化し、目標達成の確率を上げることができるのです。

以上