「経営人事改革の視点」 2014年2月号 無期転換ルールに関する「労働契約法改正」の動向

労働契約法と無期転換ルール

民主党政権下で法律改正が行われ、昨年4月1日より施行された改正労働契約法により、いわゆる「無期転換ルール」が導入されました。

これにより、同一の使用者の下、有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合に、労働者に「無期転換申込権」が発生することとなりました。つまり、有期労働契約が5年を超えた労働者が「申し出た場合」、その有期労働契約は無期労働契約に転換してしまうというものです。

法律により、そのような効力が発生するので、就業規則で無期転換を「禁止」しても機能しません。もちろん、無期転換しても「正社員」になるわけではありません。法律が求めているのは、単に有期契約が無期契約になることだけで、時給制の労働者が無期になったとしても、月給制に変わるわけではありません。なお、無期契約労働者=正社員という定義を持つ企業では、無期転換が正社員を意味しますので、注意が必要です。

逆に「雇い止め」が増加

企業にとっては、この無期転換のルールは非常に扱いにくいものです。5年を超えて、「申し出た」労働者だけが無期契約になり、「申し出なかった」労働者は有期契約のままということになります。つまり、有期契約と無期契約の労働者が混在することになります。

こうした状況を防ぐために、「有期労働契約は5年を上限とする」というルールを導入する企業が増えています。この規定を導入した場合、すべての有期契約労働者は、5年以内に雇止めされることになります。これは最初から予想されたことですが、現実は政策意図とは逆に、職を失う労働者が増えかねない状況にあります。

もちろん、企業としては有能な労働者を手放したくはないので、有期労働契約は5年で打ち切るけれど、有能な労働者については、正社員や準社員としての雇用の道を用意することが一般的です。

昨年末に特例法が成立、施行

こうした現場の動きがある中で、昨年12月6日の参議院本会議で「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律案」が可決・成立しました。そして、すでに一部は施行されています。

特例法により、一定の要件を満たす大学の教員等については、無期転換申込権にかかる年数要件が「10年」とされました。

この特例法は、大学の教員等で、5年を超えるようなプロジェクトに関わる有期契約労働者についても、5年経過時点で無期転換申込権が発生してしまうと、5年を超える前に契約を打ち切らざるを得ず、雇い続けることができないという現場からの声に対応して立案されたものです。大学の教員等の中には、有期労働契約の方も多く存在しますが、そうした方々が早々と雇い止めされてしまうという問題も報告されていました。こうした問題への対処の意味もあるかと思われます。

さらなる改正に向けた動き

現在、厚生労働省の労働政策審議会(労働条件分科会有期雇用特別部会)において、高度な専門職に就く高収入の有期労働契約者で一定の期間内に終了すると見込まれる事業(オリンピックの開催準備等)に従事する者等について、5年経過時点で無期転換申込権が発生しないこととする「有期雇用の特例」作りが検討されています。

同省では、この結果を今年3月上旬までに労働契約法の改正案としてまとめ、通常国会に提出する方針です。

特例の対象には高年齢者も含まれる見通しですので、企業にとってはさらなる就業規則等の見直しが必要となる可能性もあることから、今後も動向を注視する必要があるでしょう。いずれにしても、有期労働契約の無期転換は制度としてわかりにくく、特例法でそれがさらに複雑になります。

そもそも企業が有期労働契約を多用するのは、無期労働契約の解除つまり解雇が難しいからです。法律上、企業は解雇権を有していますが、裁判で争われれば敗訴することが多く、事実上解雇が難しいというダブルスタンダードが存在します。

国は、解雇のルール化などの問題に正面から取り組む必要があります。小手先での工夫を繰り返していても、現実の雇用における矛盾が拡大し、弱いところにしわ寄せが行くという現象がさらに強くなるのではないでしょうか。