「経営人事改革の視点」 2017年4月号 業務改革の視点

業務のムダ

業務にはムダなものがたくさんあります。現在行っている業務の半分程度には大きなムダが含まれていると考えてもあながち間違いではありません。ムダを省くための業務改革は、常に行っていく必要があります。そうしなければ、月日が経つとともにムダが積み重なっていくからです。

なぜ時間とともにムダが増えていくのか。どんな業務も最初は目的があって始まるわけですが、その目的意識は時間とともに希薄になり、業務の遂行事態が目的化していくからです。したがって、業務改革にあたって第一に考えるべきことは、そのプロセスを何のために行っているかという振り返りを行うこと、つまり目的の確認です。

どんな業務プロセスにも目的があり、そのプロセスで生まれるアウトプットを受け取る人がいます。それは直接的な顧客である場合もあるし、社内の別の人間あるいは社外の関係者の場合もあります。その効果を確認するためには、「この仕事は誰のため、何のため」と問いかける必要があります。

目的の確認を行った結果、その目的達成のためには別の手段をとった方が合理的であると判断できることも往々にしてあります。また、すでにその目的は別の事情で達成されていて、業務自体が不要になっているケースも少なからずあります。その場合、不要な業務を破棄することが最も合理的な対応になります。

標準化を常に行う

達成すべき目的にあった手段・方法で業務を推進すること、つまり標準化された方法で行うことが必要ですが、業務を遂行するのは人間なので、その方法はしばしば変化します。

そして人間が起こす変化には、良い変化と悪い変化があります。

悪い変化とは、目的達成のためにならないような方法で行うこと、例えば手抜きです。手抜きはわかりやすいのですが、悪い変化には「悪い」とは思われないような内容のものもあります。例えば、手厚すぎる方法で業務を行うことも悪い変化の代表例です。必要以上に丁寧に時間をかけて行うことはありがちなことで、むしろ手抜きよりも多いかもしれません。

それがなぜ悪いかというと、目的達成のための手段としてはコスト(時間)をかけ過ぎだからで、過剰品質ということもできます。趣味ではなく、ビジネスを行うわけなので、求める効果(成果)に対してコストをかけ過ぎてしまったら、経営が成り立たなくなります。つまり、業務の遂行方法は、目的達成のために必要かつ十分な形で標準化しなければならなりません。

一方で良い変化とは、目的達成を低コストで実現する、あるいはコストを変えずに大きな成果を達成するなどの変化、つまりイノベーションを起こすことです。そのような変化があった場合は、その方法を新たな「標準」としていく必要があります。つまり、「横展開」です。

ビジネスモデルが個別のプロセスを規定する

業務の遂行は目的達成のために行うと書きましたが、これは当然といえば当然の話です。ここで、その目的はどのように規定されるのかという問題があります。

結論をいえば、それは経営戦略、ビジネスモデルによって規定されます。すべての業務プロセスは、どのような商品・サービスを提供して、どのような顧客価値を実現するかという点に収れんしていきます。実現したい顧客価値やビジネスモデルによって、それぞれの業務プロセスの「標準」も変わってきます。

同じアパレル販売でも、ローコストオペレーションにより大量の商品を売っていくユニクロのようなビジネスモデルと、単価の高い商品を高所得者に販売する業態では接客という業務プロセスの「標準」は違います。

親子間の対立でマスコミを賑わせた大塚家具が、会員顧客に対して寄り添う形での接客を行っていたこれまでのスタイルから、フリーの来店客に対して「寄り添わない」接客へ変化したのは、ビジネスモデルの大転換によるものでした。転換後のビジネスモデルにおいては、「寄り添わない」接客が正解だと思いますが、そのビジネスモデル自体の成否の結論は、市場が最終的に下すことになります。

良いビジネスモデルを描くことが大前提ですが、その上で、悪い変化を素早く修正し、良い変化を横展開していくという改革視点が必要です。それを持ちながら業務を遂行していけるかどうかが企業発展の成否を握ることになると思われます。

以上