「経営人事改革の視点」 2018年2月号 採用時の教育訓練

ビジネスモデルの基盤をなす採用・定着

人材採用と定着が企業経営の最重要事項の一つになっています。人手不足によって、売り上げの伸びが止まったり、新規出店が行えなくなったりする例もめずらしくありません。これらの事例では、人の限界が事業の限界になっているのです。この傾向は今後どんどん加速するものと考えられます。

人材の入り口、つまり採用・定着はビジネスモデルの基盤となります。しかし、せっかく採用した社員が短期間で離職してしまうという現象が非常に多く見られます。それによる時間的、金銭的損失は多大なものになります。

新入社員が、せっかく正社員として入社した会社を早期に退職するには、それなりの理由が必ずあります。そこには、様々な理由があると思われますが、その典型的なケースは、基本的な業務スキルがないために、現場での「役立ち感」がなく、自信を失い心理的に孤立した状態になって離職に至るというものです。

もちろん、新入社員なのでスキルレベルはゼロあるいは非常に低い水準にあるわけで、だからこそ、そのまま現場に出してしまうと様々な問題が生じます。サービス系職種ですと、いきなりプロとして顧客の前面に立たされます。事務系職種などですと、現場にとりあえず放り込んで補助的な仕事を断片的に与えていくという方法論がありますが、これもモチベーションを大きく下げることにつながります。

新参者として入社した人間にとって、何らかの形で自分が機能を果たしている、会社の役に立っているという感覚がとても重要なのです。そしてそれは、初期教育によって一定程度実現していくことが可能なのです。

どのように教育訓練を行うか

入社早々の初期教育で行うべきことは、スキルゼロの人間を、最低限の振る舞いができるような状態に持っていくことです。これは教育というよりも、むしろ訓練という言葉がふさわしいかもしれません。

教える内容としては、新入社員が当面(例えば半年間程度)取り組む仕事について、その一連の業務が、どういった要素(作業)で成り立っているか、その構造を理解させることです。

まず全体像を理解させることは非常に重要で、これにより、すぐにはできないまでも、何をどこまでやれるようになればよいかが理解できます。それがないと、自分が知らない様々な作業が無限に広がっていると感じてしまいます。やるべきことは有限で、それは十分に修得可能であると理解させる必要があります。

そして、全体像を理解させたうえで、例えば接客サービスであれば、一連の業務プロセスを模擬的になぞってみる訓練を行います。ひとつひとつの振る舞いを実際にやらせてみるということです。

事務系職種の場合、電話応対やパソコンのソフトの立ち上げから、業務処理の流れに沿った作業のしかたを、これも模擬的なワークサンプルを用意したうえで、実際にやらせてみます。なお、事務系職種で欠かせないのがタッチタイピングの訓練です。ブラインドタッチができるかどうかで、その後の生産性が大きく変わります。ブラインドタッチは、早ければ2〜3日でできるようになりますので、それを初期段階で修得させることが最も効率的です。

当面の業務の全体像を理解させること、そして実際に動作レベルでそれぞれのプロセスを体感させること、これが初期に行うべき教育訓練の基本です。概念的なことだけ教えて、あとは現場に放り込んでOJTで対応すればいいというのでは、決してうまくいきません。

初期教育を適切に行うことで、現場で早く役立つようになり、モチベーションも上がります。そして、現場もそれによって助かりますので、人間関係に好循環も生まれて、結果的に離職防止にも役立つことになります。

こうしたことを行うためには、当然教育プログラムを事前準備しなければなりません。それはなかなか大変な作業ですが、そのようなプログラムを組み立てることが業務ノウハウの体系化を促進し、さらにその先の改善にもつながっていくという副次効果も期待できます。