「経営人事改革の視点」 2018年12月号 意思決定の不足

日本企業の意思決定不足

日本企業の意思決定は、諸外国の企業に比べて非常に遅いといわれています。国際的な業務提携やM&A案件などへの対応で、意思決定の遅さが災いして遅れをとるケースも多いようです。中小企業でも事情は同じです。

日本の企業における意思決定スタイルは、オーナー型で経営トップがすべて決めるタイプのものがあり、そうでない場合はコンセンサス型が主流です。このコンセンサス型の意思決定が往々にして遅いのです。

コンセンサス型というと聞こえはいいですが、その意思決定に関係する立場の人間から異論が出ないものが選択されるケースが多いのです。つまり、積極的な意思決定というよりも、消去法で残った選択肢が採用されることになりがちです。

意思決定には3つのレベルがあります。

初歩的なものは、「選択」と言っていい内容です。営業用車両が必要になったとして、どの車種にするか決めるといったものです。常識の範囲内で選んで行けば、大きな問題は発生しません。

2つ目は、ロジカルに検討を行った上で行う「決定」です。通常の投資回収判断や毎事業年度における事業計画づくりなどはこのレベルの意思決定です。

そして最も難しいのが、「決断」レベルの意思決定です。

企業が行うべき意思決定は、常に判断材料がそろっているわけではありません。にもかかわらずタイミングとして、“今”行わなければならないことが多いのです。

会社の命運を左右するような新分野進出や投資判断などは、分析的な判断ができるだけの条件がそろっていることは稀です。それでも判断を迫られるのです。そうした場合、世の中のトレンドも肌で感じながら、勘もフル動員して、最後は「決断」によって決めるしかないのです。

実はこの「勘」の部分は実は非常に重要で、人間はぎりぎりの局面になると、遺伝的に備わった判断能力が活動し始めることが知られています。勘を大事にするのは、その観点からも合理性があります。

意志決定できる人材を育てる

意思決定は、簡単なものではありません。これまでそれを行ってこなかった人間が、責任あるポジションに就いたとたんにできるようになるものではありません。比較的若いうちから、自分の判断と責任において物事を決め、その結果を味わう経験を積んでいくことが重要です。

意思決定の結果、失敗、挫折を経験することは多くあります。しかし、そうした経験が学習につながり、重大な意思決定を行うべきときに、それができる人材になるのです。

もう一つ重要なことは、意思決定の結果が思わしくなく修正が必要になった場合、ためらいなく方向転換することです。言葉を換えれば、朝令暮改を恐れないということです。

意思決定はどのような決定を行ったかの内容ももちろん重要ですが、行うべきタイミングで行うことは、それ以上に重要です。遅れたがために可能性の大部分が閉ざされていくことはよくあることです。朝令暮改を恐れない考え方があってはじめて、ためらいなく正しいタイミングで意思決定が行えるようになります。

こうした認識から、失敗しても重大な結果を招かない範囲のポジションにおいて、若手社員を登用し、積極的に意思決定を行わせていくことが人事戦略上必要になります。

意思決定とは、未来に対する自身あるいは自社の姿勢を決めることにほかなりません。そうしたことができる人材を育てる人事上の「意思決定」を行っていかなければ、会社の未来はないと考えるべきです。

以上