「経営人事改革の視点」 2018年5月号 心に残る接客サービスとは

心地よいサービスとは

店舗で接客サービスを受ける場合、心地よいサービスとそうでないサービスがあります。マニュアルに則った満面の笑顔のサービスなら心地よいかというと、必ずしもそうではありません。

接客サービスには、機能の遂行と人間関係の2つの側面があります。

機能遂行の側面は、例えばアパレル小売店であれば、好みを聞く、サイズを確認するなど、飲食店であれば、注文を取る、料理を出す、器を下げるなどで、要は仕事をこなすということです。

一方、店舗における接客などの短い時間でも、人と人のやりとりがあって、それを人間関係と捉えることができます。そして、人間関係である以上、一瞬であっても信頼関係に近いものが成立することがあるはずです。

ラポール(関係、つながりという意味)という概念があります。心理学で、人と人との間に親しい感情が通い合う状態、打ち解けた状態などを言います。営業活動で初対面のお客と打ち解ける雰囲気を作れた時など、「ラポールがかかった」と表現されることがあります。

物理現象としては、人と人がリラックスして触れ合ったり、見つめ合ったり、おしゃべりしたりしたときに、オキシトシンという癒しホルモンが分泌されて、幸せな気分になるということのようです。特に、「リラックスして見つめ合う」ことが効果的のようです。

接客サービスに話を戻すと、店舗スタッフが顧客に対して機能を果たすその前に、一瞬であっても心を開いて人としてまずは向き合い、穏やかにそしてきちんと目を見て話すという姿勢があると、ある確率で「ラポールがかかる」ことがあると考えられます。

その「おもてなし」は本物か?

「おもてなし」という言葉が頻繁に使われています。そうしたサービスが日本の魅力の一つであることは間違いないと思われますが、「へりくだって顧客の言う通りにする」思考停止型・上下関係型の接客サービスに陥らないように注意しなければなりません。

思考停止型・上下関係型のそうしたサービスは、顧客からすると不愉快さは発生しにくいものの、さして魅力的なものにはなり得ませんし、店舗スタッフにしたら働くことの喜びなど生まれようもありません。

そもそも、プロフェッショナルとしてサービスを提供する店舗スタッフと、それを受ける顧客は対等の関係であるというのが大原則です。そして店舗スタッフは、機能である前に人間であり、客も、客である前に人間です。その原点に立ち返った方が実はビジネスもうまくのです。

ポイントはやはり経営者の考え方です。経営者が上下関係型サービスで結構という考え方であれば、それ以上の展開はありませんが、真に魅力のあるサービスを提供したいと考えるのであれば、経営者がその姿勢を明確に示し、以下の取り組みを行う必要があります。

  1. 顧客にとって価値あるサービスを提供するビジネスモデルを構築すること
  2. 価値あるサービスを実現するために、店舗スタッフに必要な教育訓練を施し成長を促すこと
  3. 店舗スタッフをプロのサービス提供者として、そして人間としてリスペクトすること

大事なポイントがもう一つあります。それは、店舗スタッフがプロとして、そして一人の人間として顧客に魅力あるサービスを提供するためには、店舗スタッフが自信を持ってリラックスした状態でいなければならないということです。

そうした状態が実現した場合、店舗スタッフと個客の間に信頼関係、ラポールが築かれる可能性がありますが、そのためには職場自体、つまり経営者と店舗スタッフ、あるいは店舗スタッフ同士が、心のバリアを外したオープンマインドな状態になることが望ましいのです。そのためには、経営者自身による継続的な働きかけが必要と考えられます。