「経営人事改革の視点」 多様性がなぜ必要か

◆多様性の象徴であるLGBT

近年、企業において、多様性を確保することが非常に重要であるということが言われるようになりました。その一環で、性的マイノリティであるLGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)などの志向性を尊重する動きも顕著になってきております。それは、先進諸国においは、主流になりつつあります。

日本においては、諸外国の動きに比べれば、そうした対応が遅れていると考えられます。

ただ、日本におけるその遅れは、諸外国とは違う事情があるように感じられます。

一般的に、諸外国において性的マイノリティが弾圧されたり、差別されたりしたのは、宗教的な戒律に違反するという観点からであることが多く、弾圧や差別は過酷なものとなります。そして、性的マイノリティが市民権を獲得していったのは、大変な戦いを経たものであったはずです。したがって、市民権を得たとしても、心の奥底での差別感が消え去るものではなく、時に暴力事件などの暴発が起きることがあります。

日本においては、同性愛的な風習は歴史的に珍しいものではなかったし、それに対する宗教的な禁忌もあまりなかったと考えられます。

では、何をもってそうした志向性が抑圧されたかと言うと、異質なものを排除しようとする画一的な価値観です。皆と違うことをもって、排除しようとするその対象になることで、そうした志向性が抑圧されてきたのではないでしょうか。

LGBTは、そうした排除の対象となる多様性の象徴ですが、事はLGBTだけの問題ではありません。

◆多様性の排除はなぜダメなのか

多様性の欠如は、現在、どの組織においても大きなリスクになりえます。現代社会は、環境変化があまりにも激しいので、多様性を受け入れないモノカルチャー型の組織では、そうした変化に対応することが難しいのです。

仮に大企業であっても、恐竜が倒れるように破綻を迎える可能性がありますし、あるいは、ゆでガエル的に徐々に衰弱していくケースも考えられます。いずれにしても、臨界点を超えた時点で破綻は免れないのです。

組織文化が画一的な場合、規格大量生産型の産業構造では実に都合が良く、日本の高度成長もそれによってもたらされました。そして、その成功体験があるため、現在でも日本の会社組織では、多数派を占める組織メンバーへの同調志向が強いので、これを打開していくのは至難の業です。

なお、「同調圧力」あるいは「斉一性の圧力」などという言葉が使われることがありますが、人間の本性として自ら同調していくのが実際の姿で、本質は自己規制なのです。

モノカルチャーを改めようと思っても、それを決めるだけでは何も起きません。それに代わる別の価値観とそれによって導かれる行動様式を導入し、それでもって上書きしていかなければならないのです。

人間は、何らかの行動様式を持っていますが、それを捨て去ろうとしたときに、代わりの様式が必要なのです。そして、それは組織で認められたものでなければ、乗り換えにくいし、組織が認めても、マジョリティがその様式に変更しない状態で、自ら先頭を切る人間は少ないのです。そこで、必要となるのが、多様性つまり、さまざまな異分子の存在です。変化への先鞭をつける異分子がいてこそ、変化への対応が可能になるのです。

企業カルチャーを変えていくことは、ビジネスモデルを再構築することよりも難しく、時間と体系的な取り組みを要することですが、環境に適応していくためには避けて通れない道なのです。