「経営人事改革の視点」 2017年12月号 労働生産性の向上

働き方改革

過労自殺などの事件が大きな社会問題になり、長時間労働の是正などを主要課題とする働き方改革が日本の大きなテーマに上がっています。

これは、もちろん労働時間を短くすれば済むという話ではありません。企業が生き残っていくためには、長時間労働等を是正しながら、付加価値を向上させていくことが当然もとめられているからです。つまり、生産性を上げる必要があるのです。

生産性とは、ある価値を産出(アウトプット)するために、経営資源をどれだけインプットしたかの割合です。つまり、アウトプット÷インプットで示されます。

この場合のアウトプットには、生産高、売上高、付加価値(粗利益)などがあげられます。インプットは、売場面積(坪)、労働者数などの指標をあてることが一般的です。この場合、坪あたり売上高、労働者一人あたり売上高(付加価値)などが生産性として導き出されます。労働者一人・一時間あたりを分母に持ってくれば、人時生産性という指標になります。

労働者を分母に持ってくる生産性指標を労働生産性と呼びますが、現在働き方改革との関連で課題とされている生産性は、この労働生産性です。日本の労働生産性は先進国の中でも非常に低く、1人当たり労働生産性はOECD加盟 35 カ国中 22 位に甘んじています。これを改善しなければ日本の未来はないわけです。つまり、労働生産性の低さは、長時間労働の是正という人間らしい働く方の実現という観点からも、国際競争力の確保という観点からも、克服することが求められているのです。

事業の目的に立ち返る

生産性向上の考え方はシンプルです。方法としては、インプットを減らしてアウトプットを保つ、同じインプットでアウトプットを増やす、あるいはその2つを同時に行うことです。テーマは、労働時間の削減なので、基本的には労働投入量を減らすことを考えなければなりません。労働投入量を減らすとは、悪く言えば「手抜きをする」ということですが、アウトプットを減らさずにそれを実現するためには、単なる「手抜き」ではうまくいきません。

ここで、行わなければならないのが業務を工程に分けて考え、それぞれの目的を考えるということです。例えば、営業活動という業務は、その準備からアポイントの取得、訪問、見積もり、クロージング、アフターフォローなどの工程に分かれています。それらの工程は、さらに細かい作業で構成されています。そして、その目的によって方法や労働投入量決めなければならないという点が重要なポイントです。

例えば、ある資料を作成するという作業の場合、それが顧客に提出する営業資料であれば、形式や体裁をきちんと整える必要があります。しかし、社内の営業会議用の資料であれば、メモ書き程度でも十分な訳です。ここに余分な時間を掛けているとしたら、ムダな労働投入となりそれを省くことが合理的です。

労働投入量の削減は、「やめる→へらす→かえる」という3通りの方法があります。最も効果が高いのが、当然「やめる」です。業務の工程の全部または一部をやめてしまえば、その分の労働時間はゼロになります。「へらす」は時間を掛けて丁寧に行っていたのを、ごく簡単な方法に変えることなどです。「かえる」は、より労働単価が低い社員が代わって行ったり、外注に任せたりする方法などが考えられます。

業務の部分改善以上に重要な観点があります。それは、業務そのもののあり方をその必要性を含めて根本的に考え直すことです。つまり事業コンセプトに立ち返るということで、「誰(どのような顧客)に対して、何(どのような価値=商品・サービス)を提供するか」を問うことになります。それを行った際に、はじめて求めるべきアウトプットが明確になり、あわせて業務の何が省けるか、何を別の方法に変えて行くべきかが見えてきます。