「経営人事改革の視点」 2016年4月号 労働時間短縮と成果向上の両立

労働時間短縮に向けての動き

労働時間短縮に向けての動きが広がっています。

1つは、政府の取り組みで、現在1カ月の残業が100時間に達した場合に行う労働基準監督署の立ち入り調査について、基準を月80時間まで引き下げる方針が決まりました。この水準の時間外労働があると、脳疾患や心臓疾患が発生するリスクが高まり、現にそうした疾患に対して労災認定される事例が増えるという事情もあると考えられます。そして何よりも、長時間労働を減らすことで、子育て中の女性や高齢者が働きやすい環境を整える狙いもあります。

この問題に対して政府は強い姿勢を見せており、昨年は靴の販売店「ABCマート」、今年に入って「ドン・キホーテ」が違法な長時間労働をさせたとして書類送検されています。

企業の側も、労働時間削減に向けた様々な取り組みを行っています。

報道によれば、トヨタ自動車系のスウェーデンの販売会社では、1日8時間の労働を、2交替制で1日6時間に短縮し、集中して業務に取り組むよう改革を行ったそうです。そうしたところ、人件費は増えたものの売上高と利益は5割超増え、これをみて、同国では6時間勤務を採用する企業が広がりつつあるとのことです。

日本においても、週休3日制を導入し、その分、残り4日は1日10時間働くことで総労働時間を2割削減した地方企業の例や、賃金減額を行わずに労働時間を単純に削減し、効率的な働き方の実現を目指す大企業など、「労働時間を短縮しつつ成果を上げていく取り組み」が増えてきています。

象徴的な「会議」の改革

人口減少が進み、さまざまな制約条件を持った多様な働き手が増える中、働きやすさと成果の両立を図らなければ、日本は立ち行かなくなります。「幸い」という言葉は適切でないですが、日本における労働生産性は先進国の中では非常に低い部類に入ります。これは、効率化の余地が非常に大きいということです。

改革のポイントはいくつかありますが、「会議」の改革はその1つです。会議は、企業において多数存在し、大きな時間が費やされています。会議は、企業の意思決定機能であり、この改革は1つの突破口になり得ます。

会議の機能には、「意思決定」、「コミットメント(実施担当者が約束すること)」、「情報伝達・共有」がありますが、情報伝達・共有については、可能な限り資料の事前配付で済ませておくのがポイントです。時間の節約にもなり、事前情報を持って密度の高い議論が展開できるというメリットもあります。

もう一つのポイントは、「会議の見える化」です。会議の予定時間、開催目的、参加者、開催費用を明らかにします。開催目的は、まさに会議の議題(アジェンダ)となります。何の結論を得るための会議なのかを明らかにし、その結論を出すことに集中するということです。議題に関する関連情報については、事前資料で共有しておきます。

開催費用というのは人件費のことです。その職位によって、おおよその時間当たり人件費が想定できますので、その会議の開催費用は、Σ(時間単価×開催時間)となります。それをあらかじめ明示した場合、その費用の大きさに驚くことになるでしょう。それだけのコストを掛けて、適切な結論が出なければ無駄金となります。費用の明示は、目的達成への意識を高める効果もあるのです。そして、会議の結論については、必ず記録で残し、遂行状況のモニタリングにつなげていきます。

会議の改革は、「労働時間短縮と成果向上の両立」を目指す取り組みの1つに過ぎませせんが、モデル的な取り組みとして波及効果は大きいと考えられます。

以上