「経営人事改革の視点」 2014年9月号 働く"アリ"と働かない"アリ"

2割のアリは働かない

働くアリの集団を観察すると、ほとんど働かないアリが約2割混じっているそうです。そして、働かないアリだけを集めてグループを作ると、8割は働くようになるのだけれど、その内2割は依然として働かないそうです。

逆によく働くアリだけ集めてグループを作ると、その中の2割は働かなくなるそうです。こうした「集団が形成されると一定の割合でローパフォーマーが形成される。」という現象は一般に知られています。これらの現象については、パレートの法則(二八の法則)が当てはまると考えることもできるわけですが、しかし、どうしてそのような現象が起きるのかはほとんど知られていません。

今回、生物学者で北海道大学准教授の長谷川英祐氏の対談記事(日経ビジネス)を読んだところ、その理由がわかり、非常に興味を覚えると同時に、その考え方は企業経営にも大いに参考になると思いました。

働くアリと働かないアリの違いは何か?

一言でいうと、「反応閾値(いきち)」の違いだそうです。反応閾値とは、ある刺激に対して行動を起こすのに必要な刺激量の限界値のことですが、わかりやすくいうと、「仕事に対する腰の軽さの違い」です。

なぜ2割は働かないか

やるべき仕事が発生したという情報があった際、反応閾値の低いワーカーは、ちょっとした刺激ですぐに行動を起こします。例えば、レストランで客が何か困った様子を見せた場合、すぐにそこに向かうスタッフと、呼ばれなければ動かないスタッフがいます。すぐにそこに向かうスタッフは、反応閾値が低いということになります。

オフィスで電話が鳴った時に、すぐに取るスタッフ、何度も鳴らないと取らないスタッフも同様です。

アリの集団には、24時間常にやっていなければいけない仕事があるそうです。例えば、卵の世話。アリの卵は、常に誰かがなめていないとすぐにかびてしまうそうです。そこで、最初に仕事が発生したときに、全員がそれに向かって行ってしまうと、他のことができなくなってしまう。そうした事態を防ぐために、仕事発生の情報に対して、行動の起こし方に差があることが合理的と考えられるわけです。

働かないアリは、絶対働かないのではなく、仕事発生の情報が一定程度を超えれば働くようになる。こうしたシステムにより、結果として分業が合理的に進み、集団の維持が可能になります。

人間の場合

アリの場合、反応閾値が高いアリも低いアリも能力の違いはないとのことです。これは注目すべきポイントです。

人間の場合は、反応閾値が低い人ほど、つまり行動が早い人ほど職務遂行能力が高い傾向があると推測されますが、あまりこうした固定観念を持たない方が良いのかもしれません。

反応閾値の低い人も高い人も、本来は基礎的な能力に差がないのかもしれません。ただ、行動の早い人、仕事の着手が早い人、仕事に対して腰の軽い人には仕事が集まり、結果として能力も向上し成果も出るようになるという好循環が生まれます。

長い仕事人生において、この差はとてつもなく大きなものになります。アリの集団のように、着手が遅いグループが存在することの合理性は、人間の企業においては少ないと思われます。「仕事に対する腰の軽さ」「着手の早さ」が、結果として成果につながること、能力向上にとってとても大きなポイントとなることを企業は0共通認識として持つべきと考えます。

以上