「経営人事改革の視点」 2017年5月号 働きやすく生産性の高い職場とは

自由度がある職場

働きやすい職場とはどのような職場でしょうか。

それは、ある程度の自由度を持って働ける職場のことです。自由度のない職場では、常に上司の指示を仰いだり、周りの空気を読んだりしたうえで行動を起こさなければなりません。一方、自由度のある職場は、どの範囲まで何をやったらいいかが明確になっている状態にあります。それにより、自分の意志で、あるいは自分の工夫によって、業務を進めていくことが可能になります。

人間は自由を欲する生き物です。あまり報酬が高くなく、昇給もないような職場なのに、社員の定着率の良い職場の多くは自由度のある職場です。

成長がなく、変化に乏しい職場が結果的に働きやすい職場になることはそれ自体悪いことではありませんが、問題は成長企業において、いかに働きやすい職場を作るかです。あるいは、成長と働きやすさをいかに両立させるかです。成長企業においては、短期間のうちにやるべき事が変化していくので、自由度が担保しにくいのです。

必要なことは、変化に対応してそれぞれのスタッフの役割・やるべき業務を明確にしていくことです。そして、業務をいつまでに完了させるかについても明らかにしなければなりません。業務の遂行方法については、これもそのつど上司に聞いていたのでは窮屈な状態になります。かといって、各人が好きなやり方で業務を遂行するのでは、非常に効率の悪いことになります。したがって、業務の遂行方法についても、職場における共通認識を作り上げていく必要があります。

こうした役割・業務に関する基本的な枠組みを作る行為を、マネジメントサイクルの中に埋め込んでいくことが求められます。

チームワークとは

企業においては、基本的にチームで働きます。チームワークも働きやすさと関連した重要な要素です。ではチームワークとは、みんなで仲良く働くことでしょうか。それがしやすいように、時々は連れだって飲みに行くことでしょうか。そうではありません。チームワークの判断は、業務遂行、機能発揮レベルで行わなければなりません。

アメリカの大学病院での事例があります。手術における医療事故が多い大学病院に置いて、一つの改革が行われました。通常、手術は何人かのチームで行い、大規模な手術になると、10人もの医療スタッフがチームを組むのですが、開始にあたって全員が自分の名を名乗り、役割をいうというのがその改革の内容です。手術前の自己紹介が改革の中身でした。

従来は、そのようなことを行わずに手術が行われたのですが、その場で初めて出会うスタッフも少なくなく、そのまま手術は執り行われてきました。手術前にきちんと名前と役割を確認する、ただそれだけのことで、手術におけるミスが劇的に減ったとのことです。

この事例は、チームワークというものの本質を表しています。チームワークとは、チームのメンバーがそれぞれの役割を認識し、連携しながら業務を遂行していける状態のことをいうのです。そしてチームワークは、経営の工夫によって実現可能なのです。

働きやすさを担保する

人間は無理な体勢で長期間労働することはできません。肉体労働であればそれは自明なのですが、非肉体労働においても、それは同じことです。肉体労働において、体の姿勢に無理がなく、手足が自由に動かせることが必要なように、非肉体労働においては、不自然な拘束を受けることなく、明確にされた限度内において、自分の意志で判断を加えながらのびのびと業務を進めていけることが必要なのです。

「あるべき論」から、人間の自然な姿、本性に逆らった形で行動を要求しても、けっして長続きしません。のびのびと業務を遂行できれば、生産性も上がり、結果として社員の満足度、定着率も向上します。経営に要求されるのは、激しい環境変化の中にあって、人間にそなわった力が無理なく発揮できるよう、枠組みを作りつづけていくことです。

以上