「経営人事改革の視点」 2014年10月号 会社のDNAをどのように残し、伝えるか

会社のDNAとは何か?

企業も、人間が集まって形成される組織である以上、さまざまな特徴を有します。それを表すために、「企業のDNA」という表現が時々使われます。

DNAという表現は、組織としての考え方や行動の根源的な特徴を指すことが多く、その内容は、技術や改善へのこだわりであったり、徹底して採算を求めることであったり、あるいは人材を大切にすることであったりします。DNAは、そのまま企業の強みであることが少なくありません。

企業のDNAは、最初から確立しているわけではなく、創業期からいろいろな試練や変遷を経て形成されていきます。これらの内容については、単に成り行きに任せた結果形成されてきたということもありましょうが、ある時点からは意識して作り上げていくことも可能であると考えられます。

社史を作る

DNAは、会社の歴史と深い関わりを持っています。社史を編纂することは、企業のDNAを明確にするための有力な手法です。しかしながら、大企業はともかく、中小企業で社史を持っている企業は非常に少ないのではと思います。目前の業務を遂行することに、経営資源の大部分を投入せざるを得ないのが中小企業の現実だからです。

しかし、社史を作成することのメリットは非常に大きく、中小企業がそれに取り組む価値は十分にあると考えられます。社史というと、写真がふんだんに入ったハードカバーの立派な本を連想しますが、形式は必ずしも重要ではありません。

また、内容も歴史年代風にまとめる必要はなく、重要な事実や転機となった事柄などに絞ってまとめていくという方法もあります。一気に完成版を目指すのではなく、少しずつまとめ上げていっても良いのです。要は、大事なことが書き残され、それが伝わるべき人に伝わっていくことが重要なのです。

なぜ、社史が重要か?

企業の創業初期段階の歴史には、経営理念が形成される過程や、自社の企業価値が明確になっていくプロセスがあります。それらに関するわかりやすいさまざまなエピソードも隠されているはずです。

これらのエピソードは、企業を共同体に見立てれば、「創世記」ということができます。共同体のマネジメントを行うにあたって、企業は自身の「創世記」を大切にし、次世代に伝えて行く必要があります。

「敵を知り己を知れば百戦危うからず」という言葉がありますが、自分たちが何者かを理解するためには、創世記から今日に至るまでの経緯を知ることがとても重要なのです。

ミュージカル“キャッツ”で有名な劇団四季では、横浜市あざみ野にある本部の建物の中央にメモリアルルームを設置しています。劇団四季の創設の礎となり、故人となった俳優や劇団スタッフの写真を10数枚掲示し、それらの人びとの命日に線香を上げ、その功績を偲ぶことを続けているそうです。そうした行為も、劇団四季の成功の要因の一つかもしれません。

社員教育と社史

社史は、社員の教育に使うことができます。特に、新入社員教育の教材としてとても良い教材になります。

社員は、社史を知ることで、現在の会社がどのような経緯で成長してきたのか、創業者、経営者の思いはどのようなものであったか、あるいは業界がどのような形で発展してきたか、などについて学ぶことができます。そして、自社のDNAや企業カルチャーについても、理解を深めることができます。経営者と社員のギャップ、ベテラン社員と新入社員のギャップを埋めることにもつながります。

形式にとらわれず社史を残していくことは、企業にとって非常に意義のあることと考えられます。

以上