「経営人事改革の視点」 企業で不正・隠蔽事件はなぜ起きるか

◆不正・隠蔽事件の発生メカニズム

近年、日本を代表する大手有名企業で、性能データ偽装、会計不正などの不祥事が多発しています。こうした事件はなぜ起きるかを考えてみたいと思います。

こうした事件が明るみに出たときに、よく使われるのが「組織防衛」という言葉です。組織を守るために行ったという見立てです。しかし、これは事実を正しく見ていません。なぜなら、結果的に組織は防衛されずに、むしろ壊滅の危機に直面するほどだからです。

冷静に考えれば、不正や隠蔽が発覚した場合のリスクは認識できるはずです。それがあっても、不正や隠蔽に走るのは、2つの要因があると考えられます。

1つは、リーダーの自己保身、もう1つは集団の決定には原則的に従ってしまうという組織メンバーの本能的な反応です。そして、自己保身の根底にあるのは、自分の欠点・弱点を隠そうとするメンタリティです。

一般に、人は、他人に弱みを見せたくないので、自分の欠点・弱点を隠すことに多大なエネルギーを使っているという事実があります。これは、会社においては、上位階層の役員・社員ほど陥りやすい傾向で、上位役職者としてのプライドがあり、自分がその地位にふさわしくない人間と思われたくないからです。

この背景には、欠点や弱点を見せてしまうと、リーダーの座を奪われかねないのでそれを避けようとする深層心理の働きがあると考えられます。したがって、欠点・弱点を隠すという行為は、一種の「マウンティング」と捉えることができます。

こうした傾向は、女性よりも男性がより強いと思われますが、動物的な本能の動きと捉えれば納得できます。

欠点・弱点を隠す志向性が、それを解消する努力に結びつく面がゼロとは言えませんが、隠すことが主、努力が従になってしまうと、弊害は非常に大きくなります。それは隠蔽に直結するからです。そして、往々にしてそうなっていきます。

◆自己開示できる風土が必要

企業において、組織メンバーが自然に自己開示できる状態であると、人は自分の欠点、弱点を隠す必要がなくなります。ありのままに近い姿がお互いにわかるようになり、できないことはできない、知らないことは知らないと素直に言えるようになるからです。

風通しがよく、肩の力が抜けた状態で、会社に問題が起きたときに、それを無理に隠す必要がなくなります。そもそも、弱点を隠さずに開示してしまった方が、それを補うための手立てを講じやすいし、それを克服するための努力もしやすいのです。自己開示は、組織のリスク対策にもなるのです。

しかし、「自己開示を進めましょう!」とかけ声を掛けても、簡単に進むものではありません。

まずは、コミュニケーションの基盤が必要です。自然な会話が進む組織でなければ、自己開示まではとてもいきません。実質的な意思疎通ができる会議、ミーティングの場などが必要です。フェイス・トゥ・フェイスが理想ですが、それができにくい現代の環境下では、グループウェアやメール配信システムでそれを補わなければなりません。

自由に議論できる風土がなければ、当たり障りのないことは言えても、核心的な部分に触れる会話が成り立ちにくいので、「自由な議論を許し促進すべき」という共通認識をつくらなければなりません。その上で、自己開示を組織メンバーに勧める働きかけも重要です。

自己開示や自由な議論が行われるようにすることは、このように大変なことで、そうでない状態の方が、むしろ当たり障りがなく楽なのです。

そこを敢えて波風立ててやって行こうということなので、経営トップの強力な意志がなければ、自己開示や自由な議論は実現していきません。しかしながら、この混迷の時代にあって、リスク管理の面だけでなく、より大きな価値を生む組織作りの観点からも、取り組む意義のある内容であることは間違いありません。       以上