「経営人事改革の視点」 人材難時代のリファラル採用

◆人材難は続く

廃業する企業が後を絶ちません。かつて廃業する企業の大部分は経営難によるものでしたが、最近では後継者不在を理由とする廃業が増加しています。

それに加えて、比較的優秀な後継者が存在しても、事業継続をあきらめるケースが増えてきています。後継者が企業経営に限界を感じてのことです。

どのような限界を感じるかは、ケース・バイ・ケースですが、代表的なものを一つあげるとすれば、それは人材難による事業継続の限界です。求人活動を行っても全く反応がない、採用できたとしても、短期間で辞めてしまう、今後もそれが改善される見込みがない、といったものです。

人材難は、特に現場で人的サービスを行う業種・業態の場合、人の不足がそのまま売り上げ減につながるため影響は深刻です。そのような直接的な事情もありますが、自社に誰も来てくれないという現実に対して、心が折れてしまうのかもしれません。

ある程度知名度のある企業でも、人材が豊富でその面では困っていないという企業は非常に稀ではないでしょうか。今やどの企業にとっても、採用・定着は非常に困難な課題であることは間違いありません。

根本策としては自社を魅力ある企業にして、そこで働きたいと思える可能性を高めていくことが必要なのですが、まずは今やれることとして、リファラル採用の検討をおすすめします。

 

◆リファラル採用

リファラル採用という採用手法は、リファラルつまり紹介による採用で、主に自社の役員・社員が候補者を紹介するものです。

リファラル採用は、アメリカなどでは広く採用されており、日本では縁故採用が形式的にはそれに近いものがあります。しかし、縁故採用と決定的に違うのは、紹介によって候補者となる人材を特別扱いせずに通常の採用判断を行うことです。

採用に関するマス媒体(求人広告、求人情報誌、リクナビなど)を使うには、非常に大きなコストがかかります。そして今や効果も限定的で、応募者があったとしてもその人物を見極めるのは至難のわざです。

中小企業の場合、採用に関する意思決定の9割くらいが面接による判断だと思われますが、一般に面接による人物判断の精度は非常に低いといわれています。一方、人物をよく知る社員等からの紹介によるリファラル採用では、人物像や能力も事前にわかることが多いので、評価の精度が上がり、採用プロセスも短縮できます。マス採用媒体や平均的に年収の35%程度が必要な人材紹介を利用することに比べて、ほとんどコストがかかりません。

リファラル採用は非常に効果の高い手法ですが、その運用は簡単ではありません。

まず、社員を大切にする企業でなければ、社員による紹介は起きません。友人や知人を紹介することで、人間関係にひびが入るからです。

紹介された人材に対して、会社が丁寧に接することは基本中の基本です。紹介者には、先方に連絡を取ることの了解だけをもらい、それ以上の負担をかけてはいけません。そして、こちらから相手のフィールドに出向く姿勢が必要です。ただし、採用判断はあくまで公平に行います。そのようなリファラル採用の全体像を社内に明確に示しておく必要があります。

リファラル採用には意外な可能性があります。例えば、新規採用者や新卒内定者のまわりには潜在的に求職者が存在します。ビジネスルールに抵触しない範囲に限っても、取引関係で求職者や転職希望者が存在することはめずらしくありません。

今、ここから始めるリファラル採用には大きな可能性があります。前述のとおり、アメリカをはじめとする欧米でのスタンダードな手法で、マス媒体を使った日本的な新卒一括採用などが異例なのです。

人材採用は企業存立の基盤で、それに全社員が一丸となって取り組むことの意義は大きく、むしろ本来の姿であるといえます。