「経営人事改革の視点」 2018年3月号 ”人材育成”の可能性

「人」を育てるということ

優れた商品・サービスを市場に提供していくためには、有能な人材が欠かせません。そのためには人材育成が不可欠であるというのが、少なくとも発展を目指す多くの企業において共通認識になっています。

しかし、人材育成というのは簡単な取り組みではありません。

そもそも人は、生まれて、家庭において育てられ、その後義務教育だけで9年、そして場合によって高校、大学などでも教育を受け、そのうえで社会人となります。

すでに人格構造や基礎的な教養や思考能力などの基礎的部分はできあがっています。企業において、それを根本から変えていくのはとても難しいのです。それだけに、人材マネジメントにおいて、採用が最重要事項であることは否定できません。

人格や能力の基礎的部分は変えようがないのに、それが当然できるかのように思うことは間違いです。人材育成は、まずその認識からスタートする必要があります。さらに言えば、人材育成という言葉には、企業が社員を全人格的に育てていくというイメージがあり、守備範囲が広すぎるという気がします。企業には、そこまでの力や本来的な機能はないと考えるべきです。

もちろん、企業で働き教育も受けることによって、職業能力が向上することに加えて、結果として人格が磨かれていくことも少なくありません。しかし、それはあくまで結果論であって、一義的には職務能力を向上させること、つまり「仕事ができるようになること」を直接的な目標にすべきです。

仕事ができるようになるために、何を教える必要があるか、それをどんな順で行えばいいかといったことは、考えていけばわかります。それはすなわち人材育成ということですが、より端的に言えば「仕事がまだできない人材が、仕事ができるようになるために、順を追って必要な内容を教えていくこと」という定義になります。こうした内容であれば、非常に現実的な施策になります。

なお、「仕事ができる」という内容には、個々具体的な職務に加えて、PDCAサイクルを回していくこと、組織マネジメントを行うことなど、ビジネスを遂行するうえでの基幹的なスキルも含まれます。こうしたスキルも磨かれていけば、結果的に全人格的な成長に近いものが得られると見ることもできます。

人材の成長と社会の発展

仕事を教えることに加えて、会社のルール・行動規範に沿った行動が取れるように指導することも、組織の運営においては非常に重要です。ルールや行動規範は企業カルチャーを形成する重要な要素と言えますが、人間としての価値観は様々で、それらを無理矢理押しつけることはできません。その点において行き違いがないように、採用段階において、会社の経営理念(価値観)や行動規範をわかりやすく説明しておくことが求められます。そして、それに共感、同意できる人材に入社してもらう必要があります。

このプロセスは非常に重要です。なぜなら、これらは人間の価値観に関わる部分で、後から挽回のきかない内容だからです。そうした内容を確認したうえで、職業選択の自由により選択した会社のルールや行動規範を守るのは当然のこととなります。

自由主義社会である現代は、企業が自由な競争環境の中で切磋琢磨し、よりよい商品・サービスを競いあうことで進歩していく社会です。自由主義の根本原則に、起業の自由、職業選択の自由がありますが、その自由を行使して企業で働く人材が、仕事ができるようになることを通じて、自身も成長し社会の発展にも貢献するという良い循環を多くの企業で実現していただきたいものです。

以上