「経営人事改革の視点」 2015年6月号 人材活用の方法「地域限定正社員」

一般職区分の廃止

ここ数年の傾向として、企業において一般職の社員区分を廃止するケースが増加しています。一般的に、総合職が基幹的で裁量を要する業務を行う役割とすれば、一般職はいわゆる事務仕事的な定型業務をこなしていくもので、その違いは責任の範囲・重さや職務内容です。

一般職廃止にはさまざまな理由がありますが、IT化の進展もあって単純な事務的作業が減少しており、それらがなくなることはないにしても、派遣やパートタイマーなどで対応が可能であるというのがその理由の一つです。

特に大企業の場合は、一般職といえども労働コストはそれなりに高く、付加価値の高い業務に就いてもらわなければ競争に勝ち抜けないという事情もあります。また、能力は高くても遠方に転勤したくないという理由で一般職を選ぶケースにおいては、一般職の枠組みが能力発揮を阻害している可能

性があり、その枠組みを取り除けば、押さえられていた能力が開花することも期待できます。そして、一般職のほとんどが女性であり、結果として男女均等待遇に反するような状態となりかねないという問題もあります。

新しい社員区分

一般職に代わって増えてきたのが、地域限定正社員、地域型社員、エリア総合職などと呼ばれる社員区分です。その区分の社員は、総合職正社員と役割や職務内容自体が変わるものではなく、自宅から通勤圏内の勤務つまり転居を伴う異動がないことだけが総合職と異なります。なお、「自宅からの通勤」は、1時間30分程度の通勤時間を上限にしているケースが多いようです。

少子化の影響もあり、親元から離れたくない、あるいは離れることが難しいという人は増加しています。そうした人の中にも、当然有能な人材はたくさんおり、地域制限のある区分が一般職だけだとすると、責任範囲が定型業務や事務仕事などに限られてくるので、非常にもったいないことになります。そうしたミスマッチをなくすために、地域限定正社員の区分を設けることになるわけです。

正社員は、総合職正社員と地域限定正社員の2区分とし、定型的業務は契約社員やパートタイマーあるいは派遣社員で対応するというのが、一つの典型的な姿です。

地域限定正社員の処遇

地域限定正社員の処遇については、制約条件がある分、賃金水準は総合職に比べて若干は低いものとなります。同一等級で同じような職務についた場合、10%程度総合職正社員の方の賃金水準が高いというのが一般的なあり方でしょうか。ただ、自宅通勤を前提にすれば、多少賃金水準が低くても生活コスト面で必ずしも不利になるとは限りません。

また、全国展開する企業の場合、総合職正社員の場合は全国統一賃金水準となりますが、地域限定正社員については、地域手当を設定してその金額をエリアによって変えるなど、賃金の地域間格差を設けることが多いようです。

社員のグレードを表す等級制度については、一般的に総合職正社員も地域限定正社員も同一の等級制度で運用することが一般的ですが、人事上の必要に応じて国内外どこにでも異動する総合職正社員と違い、キャリアアップの上限が設けられ、多くの場合経営層あるいは上級管理職には到達しない前提が置かれています。一方で、地域限定正社員のしくみを採用するほとんどの企業は、社員区分の転換制度を同時に設けています。

有能な人材の獲得がどんどん難しくなる時代にあって、女性やさまざまな制約を持つ人材の活用を促進する有力な手法として、地域限定正社員のしくみは検討に値すると考えられます。

以上