「経営人事改革の視点」 2017年7月号 人材マネジメントを考える

「戦略」と「生身の人間」

人材マネジメントは、企業戦略によって規定されます。

組織階層をどう設定するか、あるは人事制度におけるグレード(等級)設定をどのように行うかなどの判断は、当然、企業の戦略に依ります。

人事評価においても、同様です。企業がどのように付加価値を生み出しているのか、何によって顧客の支持をえているのか、その内容やプロセスのコアな部分に光を当てない評価は大変的外れなものとなってしまいます。

しかし、戦略に合致した人事制度を構築し、それを運用していけばすべてうまくいくかというと、そうではありません。戦略つまり業務を遂行していくのは「生身の人間」だからです。感情を持った生身の人間に能力を発揮してもらい、持続的に成果を出して行くにはどうしたらいいかを系統立てて考えていく必要があります。

人間としてのリスペクト

現代の企業では、社員がただ1人で業務を遂行していくことは非常に稀で、何らかのチームプレーが基本となります。つまり、複数の人間がチームを構成するわけですが、当然、リーダーをはじめとするさまざまな役割が構成メンバーに割り振られることになります。しかし、役割以前の問題があります。それは、組織において人間関係を構築することです。人間集団は、上下関係や役割だけでは、持続的に機能していくことが難しいからです。

何も特別なことを行う必要はありません。お互いが人間として認め合って、リスペクト(尊重)すること、基本はこれだけです。しかし、それができていないことが多いのです。そうしたことは、自然体のままでは実現できないので、コミュニケーションを多く取り、相手のことを良く知るということがポイントとしてあげられます。

人間は、接触回数が多ければ多いほど、そしてよく知れば知るほど、その対象を好きになるという傾向性をもっています。これは、「ザイオンス効果」と呼ばれる現象ですが、人材マネジメントにおいて、リーダーが常に留意すべきことがらです。リーダーとメンバーが、あるいはメンバーどうしがお互い良く知り合うことができる機会を意図的に作っていく必要があります。

期待値とやりがい

また、人間集団において、リーダーはメンバーに期待することを明らかにしなければなりません。それはリーダーの基本的な役割です。人間は、人間として尊重された上で期待感をもたれた場合、それに応えようとします。そして期待感が大きければそれに対応した結果を出そうとする傾向があります。これは、「ピグマリオン効果」と呼ばれる現象です。

ただし、達成不可能と思われる期待を掛けられた場合は、それに応える行動は生まれません。一般に、達成の可能性が5割以上ある場合に期待に応えるための行動が誘引されると言われています。

残念なことですが、現実には、組織においてリーダーがメンバーに対して期待する役割や期待する成果を明確にしていないことが非常に多いのです。期待するところを明らかにすることはけっして難しいことではなく、基本中の基本なので、是非実行すべきです。

そして期待に呼応して役割を果たし成果をあげた場合には、それを認めなければなりません。結果に対するポジティブなフィードバックが、がんばった人間に対する最高の報酬になります。それは、金銭による対価をはるかに超える効果があり、次に期待を掛けられた場合、またがんばっていこうという意欲が生まれるもとにもなります。

人材マネジメントは、こうした人間特性を踏まえて行う必要があります。