「経営人事改革の視点」 2017年3月号 人材の定着を図るにはどうしたらいいか

新入社員の離職率

4月には新入社員を迎える企業も多いと思います。

新入社員に対しての企業の悩みは、ずばり「定着」です。厚生労働省の調査によれば、新規学卒者が3年以内に離職する割合は、大卒で3割以上、高卒で4割以上に上ります。

採用には、直接的にも多大な労力とコストが掛かります。それだけでなく、入社後の受け入れ、教育には膨大なエネルギーを使っています。早期離職は、それらがすべてムダになってしまいまうのです。ムダに消えてしまうコストだけでなく、そもそも戦力が整わなければ、戦いにならないのです。

では、こうした事態にどのように対応していけばいいか。

まず、基本姿勢として、社員目線に立つことです。これは対社員だけでなく、どんな場合でも言えることで、もちろん対顧客においては言わずもがなですが、これすらできていないことはめずらしいことではありません。

社員が働くも辞めるも、それは社員の人生に関することで、会社の都合で決まることではないのです。これは当たり前のことですが、であれば社員目線で物事を考えなければなりません。社員から見た会社の風景を想像しなければならないのです。これは、新入社員に限ったことではなく、実は全社員に対して経営者が持たなければならない感覚なのです。

疎外感を取り除く

新入社員は会社において疎外感を持つことが多いです。新卒採用でなくてもそれは言えるのですが、新卒の場合は特にそれが顕著です。仲間内である学生の世界から、異質な世界に飛び込んでいくわけですから、その違和感たるや相当なものがあります。ましてや、その場が村社会的な以心伝心的な色彩の強い場であった場合はなおさらです。

こうした違和感を少しでも緩和していくにはどうしたらいいか。

それは、受け入れる側から歩み寄って距離を縮めていくこと、意識してコミュニケーションを取ることです。業務上の意思疎通を行っていると、それで十分にコミュニケーションが取れているように思いがちですが、それは業務指示や業務報告に過ぎず、人間対人間のコミュニケーションではないのです。必要なのは、存在そのものをケアすることであり、もっと平たく言えば声掛けを行うこと、「かまうこと」なのです。

新入社員というのは、そのようにある意味「面倒な存在」なのですが、それは致し方ないことであり、一定期間、少なくとも半年から1年はそうした存在としてケアを怠らないことです。

役立ち感を持ってもらう

「新入社員は、役に立たないから無理に役割を与えるのではなく、まずはいろいろと学んでもらうべき」という考え方が根強くあります。

実はこの考え方は危険なのです。学ぶことは非常に重要ですが、新入社員であるからこそ、会社で役に立ってもらうことを考えなければならないのです。そのために、「新入社員サイズ」の役割を用意しなければなりません。これもかえって面倒なことなのですが、必要な対応です。

組織の中で、疎外感を持たない最大のポイントは、自分が役に立っていると思えることです。組織貢献できて、はじめて組織の一員であると実感できるのです。

そのためには、その小さな役割をしっかりとデザインしなければなりません。そうした作業が、役割があいまいで、空気を読んで物事を進めていく組織ではできかねるのです。

会社は役割が明確な機能集団にならなければなりません。ビジネスモデルにしたがって、組織がデザインされ役割が明確になっている、という状態を目指すべきです。そうした組織であれば、異質な世界から来た新入社員も疎外感を持たずに済みます。

機能集団であって、上質なコミュニケーションが取られて入れば、人材の定着も進みます。その上で離職する社員は、その組織に本当に向いていない社員なので、それはしかたのないことなのです。

以上