「経営人事改革の視点」 2016年8月号 人事評価は何のために行うか

人事評価の真の目的

人事評価は、社員の働きぶりについて点数をつけること、つまり査定であるという誤解があります。もちろん、人事評価に査定の要素があることは事実ですが、その機能は全体の中のごく一部であり、本質は別のところにあります。

企業活動とは、つきつめれば経営者や社員の行動の総合計であり、その行動の方向性や強さつまりベクトルがばらばらでは、組織として大きな力が発揮できません。企業の目指すべき方向、達成すべき目標、取るべき経営戦略等について、経営者・社員が共通認識を持つ必要があります。そして、達成すべき目標(つまり成果目標)は、企業全体の目標→部門目標→個々の社員の目標へとブレークダウンされ、経営戦略も、最終的には社員の職務行動に還元されていきます。

これらのことは「やるべきこと」と言い換えることができますが、このやるべきことを明確にするのが、人事評価の出発点となります。なお、やるべきことには売上や利益などの最終結果である成果目標と、そこに至るプロセス目標があります。プロセス目標とは、成果達成につながる「顧客志向の行動」や「改善に向けての行動」などで、その内容は経営戦略にしたがって職種や役割に応じて定義されます。ベクトル合わせとは、こうした作業を指します。

管理者の役割

人事評価は、管理者の重要な役割の一つです。管理者は最終的には自身が所管する組織として成果を出す責任を持ちますが、それを実現するにあたっての重要なマネジメントツールが人事評価です。

通常、人事評価は半年単位で結論を出していきます。ベクトル合わせ、つまり「やるべきこと」の確認からスタートしますが、半期でその結果つまり「やったこと」を判断します。しかし、半年が経過するまで傍観するのではなく、期中においてその進行状況をフォローしなければなりません。また、少なくとも四半期に一回は、管理者は部下と中間面談を行って進捗度合いを確認し、予定通りに行っていない場合は、修正に向けて様々なアドバイスを行うことが求められます。

こうした作業が、人事評価という一連のプロセスを通じて進んでいき、目標達成に関しては、単に日々マネジメントを行っていくだけよりも、はるかに実現性が高くなります。それは、評価が「処遇」に結びつくという前提があるからです。評価結果は、賞与や昇給に結びつくだけでなく、昇進・昇格や異動など、大げさに言えば人生の展開に影響を与えます。言葉を換えれば、管理者はそうした「権力」を持つのです。

管理者は、正しく権力を使うことが求められます。そのためには、評価に関するルールと公平性をよく理解し、様々な偏りを排除しなければなりません。それを担保するために、経営者は管理者に定期的に評価者研修を実施していく必要があります。

3つのマネジメントサイクル

人事評価のマネジメントサイクルは、四半期〜半年・1年サイクルの取り組みとなります。これは期間としては、中サイクルと呼ぶことができます。

これに対して、短い期間のマネジメントサイクル(小サイクル)とは、日々の業務推進や週単位、月単位のPDCAサイクルのことを指します。小サイクルだけでは、一生懸命に業務を行ったとしても、その瞬間における取り組みに終始してしまうことが多く、業務を体系的、戦略的な組み立てにしていくことが困難です。小サイクルを中サイクルに引き上げていくツールが人事評価ということができます。

そして、もう一つ、長い期間におけるマネジメントサイクル(大サイクル)が存在します。それを企業にフォーカスしてみれば、中期経営計画であったり長期ビジョンであったりします。また、それを社員にフォーカスすれば、5年、10年単位のキャリアパスということになります。

四半期〜半年・1年の中サイクルで進められる人事評価の取り組みが、短い期間のマネジメントと5年、10年単位の長い期間におけるマネジメントを結びつけ、企業を発展させる原動力になっていきます。

人事評価を仕組みとして行っていない中小企業の割合はまだまだ多いと考えられますが、持続的な発展を目指すのであれば、これに是非取り組んでいく必要があります。

以上