「経営人事改革の視点」 2016年9月号 人事制度の失敗

人事制度がかえってマイナスになる?

コストを掛けて人事制度を構築し、運用を始めたけれど、どうもうまくいかないという声を時々聞きます。もちろん、企業経営者も人事制度を導入すればバラ色の未来があるとまでは思っていないのですが、それにしても、導入したことがむしろマイナスになったのではないかという疑念を抱いているケースがあるようです。

人事制度を構築あるいは刷新して運用を始めた場合、必ず負の効果は生まれます。それは、その導入が自分にとってマイナスであると思う社員が何割かは存在するからです。これ自体は当然の現象です。

人事制度の導入は、現状を変えていくために行うものです。つまり、変化を起こすことが前提です。一方、人間はその根底において現状を変えたくないという志向性を持っています。これは無意識であるがゆえに根深いものです。

「変えること自体への反感」、「新しい評価基準が自分にとって明らかに不利になる」といった受け止め方が一定割合の社員に起こり、それが組織全体として人事制度に対するネガティブな雰囲気につながっていくという現象が起きます。もちろん、あらたな仕組みや基準に対して、肯定的なとらえ方をする社員も少なからずいるはずですが、組織に与える影響としてはネガティブ要因の方が目立ってしまうのです。

変化を起こす以上、こうした現象は必ず起きると割り切って、経営者のリーダーシップによって乗り切っていかなければなりません。もちろん、丁寧に説明を行っていく必要があることはいうまでもありませんん。

3つのマネジメントサイクル

人事制度は人材を動かすのに万能のものではありません。むしろ、限られた機能しか持たないと考えなければなりません。

人材のマネジメントは、大きく分けて3つの段階があります。時間軸でとらえるなら、3つのサイクルということもできます。

人事制度は、半年から1年を単位として、目標や評価基準を設定し、その結果を処遇にフィードバックしていくものですが、それは中サイクルの取り組みであるといえます。

小サイクルは日常的な人材マネジメントです。日々の営業活動や、週単位・月単位の活動を上司が掌握し、フォローし、結果を積み上げていくものです。上司は、日々の接触や朝礼、終礼なども活用しながら、社員をモチベートしていく必要があります。こうした小サイクルの人材マネジメントがあって初めて、中サイクルの人事制度が機能していくのです。

大サイクルの取り組みとは、社員からみればキャリアパス形成への取り組みであり、企業視点では、人材力を長期的に発展させ、それを有効活用していく取り組みということになります。

人事制度の正しい使い方

評価によって賃金を上げ下げすることをアピールするなど、中サイクルの人事制度という道具を振り回すだけでは社員は動きません。人事制度で設定された目標や方向性を、小サイクルである日常的なマネジメントにおいて、社員をモチベートしながら実務的かつきめ細かなフォローを行うことで実現していくことが正道です。その結果が、合理的に処遇に反映されていくことが実感できれば、社員の納得感が形成されます。

賃金への反映だけでなく、数年単位でそれがキャリア形成につながっていくことが実感されていけば、つまり大サイクルに展開されていくことが理解できれば、働くことの動機づけはさらに高まります。

人事制度は万能ではありませんが、日常マネジメントと中長期の企業経営を人的側面から整合させていく唯一の機能であり、企業から社員へのメッセージでもあります。

人事制度を持たずに、企業が中長期的に発展していくことは難しいでしょう。人事制度の持つ機能の限界を理解しながら、他の機能を活用しながら総合的に「人材」に向き合っていくことが唯一の方向性であると考えられます。

以上