「経営人事改革の視点」 2014年6月号 中小企業の事業承継とM&A

中小企業の事業承継

中小企業を対象としたM&Aが静かに増加しています。この現象の背景には中小企業における後継者難の問題があります。

中小企業は、個人事業も含めれば、わが国企業の99%以上を占め、そこで働く従業員数は全体の約70%を占めています。少し古いデータですが、2006年版中小企業白書には、事業承継を希望している中小企業のうち、後継者が決まっている企業の割合は半分に満たないという結果が示されていました。そして、帝国データバンクが毎年行っている調査によれば、日本の会社の社長の平均年齢は一貫して上がり続けており、2013年には58.9歳という水準になりました。

もし、成り行きにまかせていれば、早晩日本の中小企業は半分以下になってしまう恐れすらあります。これは、日本の企業数が半分になってしまうこととほぼ同義であり、そうなれば雇用の場も大量に失われることになるでしょう。

政府が閣議決定した中小企業白書(2014年度版)によれば、近年、休廃業・解散の件数も増加していますが、廃業を決断した理由として最も多かったのが、「経営者の高齢化、健康(体力・気力)の問題」(48.3%)であり、以下、「事業の先行きに対する不安」(12.5%)、「主要な販売先との取引終了(相手方の倒産、移転のケース含む)」(7.8%)が続いています。

「起業希望者」の動向、廃業対策

同じく中小企業白書によれば、近年、起業の動向にも変化が現れています。起業を希望する人を示す「起業希望者」の数が160万人台から80万人台に半減しました。一方で、実際の起業家数は大きく変化しておらず、毎年20〜30万人の起業家が誕生していることがわかりました。しかし、起業希望者の減少は、早晩起業の数にも影響を及ぼしてくると考えられます。

これらの結果を受けて、政府は、第三者への承継支援策と廃業対策を進めていくとしています。第三者への承継の支援策としては、外部に後継者を求める中小企業・小規模事業者に配慮し、高い事業意欲のある人材を確保し、後継者ニーズのある企業とマッチングさせるとともに、長期的にフォローアップしていくとしています。

廃業対策としては、(1)廃業に関する基本的な情報提供、(2)匿名性に配慮した専門家支援(電話相談)、(3)小規模企業共済制度のさらなる普及・拡大を図るとしています。

M&Aによる問題解決

こうした流れの中で、後継者難による廃業を救う具体的な手法としては、M&Aによる事業承継が最も現実的です。M&Aによる事業承継の優れたところは、市場価値を持つ「残るべき良い企業」がM&A対象となって残ることです。残るだけでなく、経営統合が行われることにより、企業の活力がむしろ増していく場合もあります。ただし、これはM&Aが成功すればの話です。なお、経営統合する側にとってのM&Aの成功とは、対象企業からの直接的なリターンと経営統合により発生する間接的な価値(シナジー効果)を合わせたものが、投下資本より大きなものになるかどうかということです。

M&Aは、それがうまくいった場合、1プラス1が2よりも大きなものになります。これがM&Aのシナジー効果であり、M&Aを実行する企業が意図するところです。もちろん失敗するケース、つまり1プラス1が2よりも小さくなってしまうケースも少なくありませんが。

いずれにせよ、後継者難の企業は、事業承継にあたりM&Aについても検討する必要があり、一方で成長志向の企業は、M&Aをその戦略の一つに加える必要があると考えられます。

以上