「経営人事改革の視点」 2016年2月号 メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用

メンバーシップ型雇用

雇用形態を特徴づける概念として、メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用というものがあります。

メンバーシップ型雇用は日本を除いてあまり存在しない形態であり、その特徴は長期雇用と職務を限定しないことで、多くはいわゆる正社員としての雇用形態です。この雇用形態の源流は、江戸時代の奉公人にあると言われています。

メンバーシップ型雇用では、担当職務やその後の人事異動などすべて白紙委任することから、社員が全人格的に組織に帰属するスタイルといっても過言ではありません。長期雇用を前提とした正社員制度は、戦後経済の発展を支える典型的な雇用スタイルでしたが、バブル崩壊後、この雇用スタイルに対してもリストラや賃金引下げなどの圧力が加えられました。

ジョブ型雇用

一方で、従来正社員が行っていた業務の多くを、契約社員やパートタイマー、嘱託、派遣労働者などが担当していて、こうした非正規社員の割合は、いまや日本全体で約40%を占めています。調査によれば、非正規社員のなかには、正社員となること、つまりメンバーシップ型雇用を希望しているがそれがかなわない者、専門職あるいは短時間労働などを希望し、正社員以外の雇用を自ら選択している者などさまざまです。

こうした非正規雇用に代表される類型はジョブ型雇用と呼ばれています。源流としてはこれも江戸時代の「仕事の成果に直接的に報酬が支払われる日用労務や請負仕事」を行う職人にあると言われています。現代の日本においても、このタイプは一定割合存在し、契約社員、パートタイマーなどとして、補助的な業務を担当する類型や、大工などの職人、料理人のほか、歩合給制で働くタクシードライバーや営業社員などがこれにあたります。勤務医や看護師などもこのタイプに含まれることがあります。ジョブ型雇用は、この業務に対して報酬がいくらと明確にしたうえで雇用契約を成立させるもので、雇用契約の本来の姿に近いのはむしろこちらのタイプです。

改革の方向性

人手不足が進む状況下、メンバーシップ型雇用に依存する人事政策では限界があります。現に、正社員よりも能力が高く成果も上げているのに年収水準は正社員の半分程度という現象もめずらしくなく、そのような不条理が存在する会社が成長していくとも思えません。また、今後さまざまな制約を持った人材が増加していくことを考えれば、制約条件にあわせて雇用契約の内容を「ジョブ型」で厳密に定義し、対応していく必要にも迫られています。

大きく捉えれば、現在の日本は、戦後の正社員施策そのものが行き詰まっていて、その転換が必要になっている状態だとも言えます。長期雇用自体を否定する必要はないのですが、職務、役割、能力といった条件、スペックを明確にし、その結果を明確に求めていくこと、つまり正社員も一定割合ジョブ型に転換するという方向性が考えられます。

職務分掌のあいまいさは、企業における職務分析や業務の標準化が進んでいないことの結果でもあり、本来それらを進めなければ、ホワイトカラー業務、サービス業務の生産性が上がらないはずです。逆に、業務改革を行い業務の標準化に取り組めば、それを遂行する社員の職務、役割、必要能力は明確にしていかざるを得ません。そうなれば、それに対する報酬も合理的なものしていくことになります。

「人」が価値を生み出していく企業において、雇用改革は根本的な問題で、ここに手をつけざるを得ないというのが日本の企業の現状です。特に、海外展開を行う会社においては、外国人の雇用概念にあわせるためにも、雇用概念の変革が不可欠のものになると考えられます。

以上