「経営人事改革の視点」 2015年7月号 パワハラ問題をどのように考えるか

厚労省がパワハラの対策マニュアルを初めて公表

厚生労働省が、企業内でパワーハラスメント対策に取り組む際の参考となる「パワーハラスメント対策導入マニュアル」を作成しました。マニュアルは同省のホームページからダウンロードできます。

マニュアルには、職場のパワーハラスメントを予防・解決するための方策として、①トップのメッセージ、②ルールを決める、③実態を把握する、④教育する、⑤周知する、⑥相談や解決の場を提供する、⑦再発を防止する、の7つの項目が掲げられています。

マニュアルは同省のホームページでダウンロードできるほか、全国で5万部が配布されるとのことです。また、同省では7月からこのマニュアルを活用したセミナーを全国約70カ所で無料開催します。パワハラ防止に国が本格的に取り組んで行こうとしていることが伺えます。

この背景には、近年、労災認定される精神疾患が急増している状況があります。労災認定される精神疾患には、パワハラと過重労働が重なった状態を原因とするものがその典型としてあげられ、国としてはこうした状況を何とか改善していきたいと考えていると思われます。

パワハラは普通にある

パワハラは、どこにでもあります。上司から部下への典型的なパワハラだけでなく、部下が上司に圧力を掛ける場合もあり、国のパワハラ定義でもこの類型があげられています。

パワハラは、企業にとって高くつきます。パワハラなどを原因とする精神疾患が労災認定された場合、企業責任が問われ、死亡や高度障害に至ったケースでは、企業に億単位の請求がなされることがあります。

そのような極端な状況は非常に稀であると思われますが、ありがちなのが、上司による必要以上の長時間の説教や、ベテランパートタイマーが新人をいじめ、その結果離職率が異常に高くなるなどのケースです。企業においては、社員のモチベーションダウン、度重なる採用コストと人材が定着しないことによるパフォーマンス不足等の損失が発生します。

そもそも、こうしたパワハラが起きる職場というのは、仕事の標準化が進んでおらず、属人的な業務遂行になっているケースが多いのです。そのことで、業務の内容がブラックボックス化しやすく、それがパワハラの温床ともなります。パワハラの起きる職場というのは、そもそも業務効率、労働生産性が低い可能性があるとも言えます。

パワハラだと主張するパワハラ

一方、ハラスメントに対して非常に神経質になっている企業も増えてきており、過敏になるあまり、上司が正当な指示命令や教育も行えないといった本末転倒なケースがあります。その背景には、ちょっとしたことで「パワハラされた」と主張をする社員の存在があります。

パワハラは、社員に対する「存在否定、人格否定」がダメなのであり、相手の存在や人格は尊重する前提において、業務上の指導や必要な教育は遠慮なく行うべきものです。状況によっては、叱責も必要になることは当然のことです。

国も「マニュアル」において、「業務上の必要な指示や注意・指導を不満に感じたりする場合でも、業務上の適正な範囲で行われている場合には、パワーハラスメントにはあたりません。例えば、上司は自らの職位・職能に応じて権限を発揮し、業務上の指揮監 督や教育指導を行い、上司としての役割を遂行することが求められます。職場のパワーハラスメント対策は、そのような上司の適正な指導を妨げるものではなく、各職場で、何が業務の適正な範囲で、何がそうでないのか、その範囲を明確にする取組を行うことによって、適正な指導をサポートするものでなければなりません。」としています。

企業は、パワハラが起きないルールづくりや社員教育などの対策を取る必要がありますが、一方で業務の標準化や長時間労働などの過重労働の改善を進める必要があります。そのことで、活力ある職場が実現されると同時に、生産性が上がり、業績が改善していくことも期待できます。ヒューマニズム観点からだけでなく、業績向上の観点からも、総合的なハラスメント対策は必要なのです。

以上