「経営人事改革の視点」 2015年8月号 サービス業・ホワイトカラーの労働生産性向上

労働生産性とは

労働生産性は、企業の収益確保のカギを握ります。労働生産性とは、労働一単位の投入(インプット)あたり、生み出されるもの(アウトプット)の量で表されますが、実際には色々な算定方法があります。インプットの例としては労働者一人当たり、労働者一人・時間あたり、アウトプットの例として生産量、生産金額、付加価値額などがあります。

私が実務において重視している労働生産性は、労働者一人当たり年間付加価値額です。これは、労働者一人が年間どのくらいの価値が生み出しているかの指標で、とてもシンプルな概念です。なお、労働者一人あたりの付加価値額と労働者一人当たりの平均人件費を比べたものが、労働分配率となります。

一般的に中小企業においては、労働者一人当たりの年間付加価値額は1000万円程度です。ちなみに、中小企業における労働者一人当たり平均人件費(法定福利費等を含む)は500万円程度なので、労働分配率は50%ということになります。

労働生産性の向上は、最終利益の向上に直結します。労働生産性が10%向上して、労働者一人当たり付加価値が1100万円になったとすると、労働時間が変わらなければ、この増加分の100万円は最終利益の増加分とほぼイコールとなるのです。

サービス業・ホワイトカラーの生産性向上

ところで、労働生産性の向上は非常に難しいことでしょうか?

それはもちろん簡単ではありません。トヨタ自動車を代表とする自動車産業などにおいては、「乾いた雑巾を絞る」と形容されるような厳しい取り組みが継続的に行われています。一方、サービス業やホワイトカラー職種では、生産性向上への取り組みは、製造業ほどには進んでいないのが一般的で、そこにはまだまだ大きな改善の余地があります。

生産性向上に向けては、2種類の取り組みがあります。一つは、仕事のやり方を改善すること、つまり同じ時間働いてより大きな価値を生み出すような方法をとることです。これを実現するためには、能力向上が必要になることも多く、今月取り組んで、今月すぐに成果が出るというものではありません。

もう一つの取り組みは、総労働時間は変えずに、付加価値を生み出す業務に取り組む時間を増やすというものです。これは即効性があります。一般に、労働者は付加価値を生み出す業務だけを行っているものではありません。例えば、営業マンであれば、顧客と面談している時間が付加価値を生み出している「付加価値業務」です。それ以外の、会議や訪問準備などは、直接付加価値を生む業務ではなく、もちろんそれらはゼロにはできませんが、なるべく時間短縮することを目指します。そして、それにより生み出された時間を付加価値業務に充てることがポイントです。

どのくらい増益するか

仕事のやり方が変わらず、付加価値業務に従事する時間が10%増えれば、付加価値は10%増加する可能性が十分にあります。

10%の生産性の向上は、先ほどのモデルにあてはめれば、100万円の最終利益の向上をもたらします。仮に、付加価値業務に従事する従業員数が100人の会社であれば、1億円の増益ということになります。

付加価値業務にどれくらいの時間を充てているかは、業種・職種によって違いますが、法人相手の営業職などでは、30%未満であることなどはめずらしくありません。仮に30%として、残り70%の非付加価値業務のうち1割、つまり7%分を削ってそれを付加価値業務に充当すると、付加価値業務の占める割合が37%となり、30%→37%、つまり23%の生産性向上となります。

一人当たり年間付加価値1000万円のモデルで考えると、まさに一人当たり230万円の利益増となるわけです。もちろん、計算通りに行かない面もありますが、ロジックとしてはそのように展開することになり、大きな増益要因となることは確かです。

どんな業種・職種であれ、付加価値業務以外に充てている時間を減らし、それを付加価値業務に充てるというシンプルな取り組みを展開することをお勧めするものです。

以上