「経営人事改革の視点」 2018年9月号 その上下関係は正しいか

企業内の上下関係

日本の会社組織では、入社年次を序列と見なしたり、役割の違いを上下関係に置き換えたりすることが普通に行われています。組織ですから、当然メンバーがいて、それをまとめるリーダーが存在します。組織のくくりは、会社全体やそれを構成する部門やチーム、プロジェクトごとのクロスファンクショナルな集まりもあります。そして、その単位ごとに当然リーダーが存在します。

日本の会社組織が特殊なのは、リーダーとメンバーの間に上下関係の階層がいくつもあるということです。ある社員の上司は、必ずしもその組織のリーダーではないので、上司・部下の間で物事が進まず、階層を一つひとつたどって上に行かないと意思決定が行えなかったり、絶えず“報連相”が求められたりするということが起きます。

これは、国際的に見たら相当特殊な状態にあると考えられます。

リーダーとメンバーという上下の関係性はどこにおいても明確で、かつ諸外国では日本におけるよりも強いリーダーシップが発揮されることが一般的であると思われます。そして、それ以外にもたくさんの職務や役割がありますが、その違いを上下関係に置き換える感覚はあまりないと思われます。

日本の会社組織では、一般的に役割(責任・権限)や職務があいまいです。それでもやっていけるのは、上下関係を背景とした日本的な報連相コミュニケーションによるところが大きいと考えられます。その結果、リーダーが本来下すべき明確な意思決定がなく、成り行きで物事が進んでいくことも多くあります。

こうしたあり方は、外国人や若年層の社員になじめないものではないでしょうか。

競争力の点でもこうした状況は大きな問題があります。国際競争の場で日本企業が外国企業に負けるのは、意思決定の遅さに大きな要因があるともいわれています。

「おもてなし」で顧客は喜んでいるか

さて、日本の接客サービスを象徴する概念に「おもてなし」があります。そのマインドによって、日本企業のサービスレベルは非常にレベルが高いと考えられています。

おもてなしは、顧客の欲求を予測した上で、それを満たすサービスを標準化・様式化して行う接客のあり方ですが、時にそれは形式的になりがちで、過剰または的外れなものになってしまう恐れすらあります。一方でそうしたサービスには多大なコストが掛かっています。

日本企業の家電製品が、発展途上国では韓国製品等との競争に負けて撤退せざるを得なかったという実態があります。この一番大きな要因は、過剰品質にあったといわれています。その市場において、顧客が求めていたものはむしろ単純な機能と低価格であって、その最も基本的なところに日本企業は向き合っていなかったのです。

日本企業の社員がかなりの長時間一生懸命働いて、顧客に向き合っていなかったとすると、では何をやっていたかということです。恐らく、視線は会社の外ではなく、会社の内側に向いていたのではないでしょうか。何層にも積み上がった上下関係、責任・権限の範囲が不明確なために、繰り返し求められる報連相や社内検討に多大なエネルギーが使われていたことが推測されます。

こうした状況は、人材育成の点でもマイナスに作用します。責任・権限の範囲があいまいなために、意思決定の訓練がされておらず、加えて業務が「タスク完結型」にならないので、社員の成長の度合いも大きなものにはなりません。

このように考えると、無意味な上下関係は何としても解消していく必要があります。企業カルチャーを変えるのは非常に難しいのですが、変革の第一歩は職務や役割の明確化であるといえます。そして、視線を社内に向けるのではなく、原点にかえって顧客にきちんと向き合うことが必要と考えられます。

以上