「経営人事改革の視点」 2016年3月号 さまざまな制約を持つ社員への対応

制約条件を持つ社員の活用

さまざまな制約条件を持つ社員への対応は、企業にとって非常に重要なテーマになってきています。人材不足もあり、フルタイムでいつでも残業もOK、どこへでも転勤可能といった従来型の正社員だけでは、企業の成長が頭打ちになってきているからです。

諸事情から転勤できない社員、育児・介護を前提とした短時間勤務、がんや糖尿病などの病気治療を行いながらの勤務などがよく見られるケースです。育児や介護については、法律で定められた義務的な対応もありますが、それを超えた対応が必要になることも少なくありません。

かつては、制約条件を持った社員は、パートタイマーなどで働かざるを得ないことが多かったわけですが、長期雇用つまり正社員としてのステータスを維持しながら、働くケースが増えています。企業としても、制約条件があっても有能な人材をその条件の中で使う方が得策であるという事情もあります。少子化に伴う労働者不足の中で、妊娠・出産という役割を果たす女性社員の活用を含めて、さまざまな制約条件を持つ社員の労働条件の合理的な設定が、重要な課題となっています。

性的少数者の問題

最近では、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)であることをカミングアウトする事例があります。割合から見ればまだ稀ですが、仮に、性同一性障害により、性の転換を行いたいといった希望が社員から出された場合、どのように対応するかは企業にとって悩ましい問題です。制約条件のうちもっとも対応にとまどうケースかもしれません。

LGBTなどの性的少数者は、人口の一定割合で必ず存在します。株式会社電通の調査によれば、人口の7.6%がLGBTであるとされています。少なく見ても20人に1人はそれに該当し、従業員100人の会社であれば5人程度はLGBT社員が存在するということになります。そして、これらの社員の大部分はカミングアウトしないので、認識されていないのが現実です。

少なくとも、性的少数者に対して差別的な扱いをしてはなりません。カミングアウトした社員及び顕在化していない性的少数者のモチベーションダウンを引き起こすという理由に加え、コンプライアンス上の問題もあるからです。

2014年に施行された改正男女雇用機会均等法では、セクハラの定義に同性による行為も含まれるようになりましたが、この概念の中には、性的少数者に対する差別的言動がセクシャルハラスメントに該当するという内容も含まれています。

必要となる業務の標準化

企業も社員から選ばれる立場にあります。制約条件を持った社員に対して、対応の限界はあるにしても、まずはその特殊事情を尊重する姿勢が求められます。その上で、可能な範囲できめ細かい労働条件を設定することが望まれます。

制約条件を持った社員の労働条件の設定は、業務がある程度標準化されていることが前提となります。全員がフルタイムで残業もいとわないという前提であれば、属人的な業務遂行方法でも何とか回っていく可能性はあります。しかし、ある程度業務の標準化が進んでいなければ、労働時間や出勤日が不均一な社員の集団でそれを行うのは不可能です。そして、業務の標準化とともに、それを遂行する社員への報酬についても、わかりやすく体系化していく必要があります。

このような対応が行える企業こそが、人材不足の時代の中にあって、社員の活力を引き出し、成長を遂げることができると考えられます。

以上