「経営人事改革の視点」 2014年5月号 「限定正社員」と多様な人材の受け入れ

人材不足と正社員化の動き

衣料専門チェーン「ユニクロ」を運営する株式会社ファーストリテイリングが、現在約3万人いるパート社員・アルバイト社員のうち、半数以上の約1万6,000人を今後2〜3年かけて正社員に登用していくことを発表したとの報道がありました。

同社以外にも、流通業や外食産業などにおいて、大手企業を中心に「正社員化」の動きが広がっているようです。

この「正社員化」の広がりの背景には、以下のような企業の思惑があるようです。

  • 「経験豊富な非正規社員のノウハウを活用したい」
  • 「待遇改善によって優秀な人材を定着させたい」
  • 「社員のやる気をアップさせて業務の質を高めたい」

そして現在、景気回復の影響もあって、様々な業種で人材不足が深刻な状態になっており、小売業においてもそれが流通業や外食産業においてもそれが顕著になってきていることも影響していると思われます。

人材不足については、景気循環的な要因だけでなく、構造的な要因もあると考えられます。労働力人口は、今後一貫して減少していきます。また、サービス経済化が進展し、第3次産業で働く人の割合が日本全体で7割を超えました。モノやサービスは量的には充足しており、プラスアルファの価値の提供が求められていますが、そのためには有能でモチベーションの高い人材が不可欠です。こうしたことからも、人材の獲得と定着が企業経営の行く末を左右する課題となっています。

「限定正社員」の活用

また、ファーストリテイリングでは、勤務地限定(店舗限定)で働くことができ、雇用期間に定めのない「限定正社員」の仕組みを取り入れるとのことです。

この「限定正社員」は、正社員と非正規社員の中間に位置する雇用形態であり、勤務地の限定のほか、職種・職種や労働時間などを限定するものもあり、最近では「多様な正社員」や「ジョブ型正社員」などとも呼ばれています。

現在、「限定正社員」の仕組みを積極的に取り入れていこうとする政府・厚生労働省の動きがありますが、何らかの「限定」があることにより、通常の正社員よりも待遇(賃金水準)が低く設定されることが一般的です。

限定正社員設定の動きに対しては、人件費を下げるための便法であるという見方がされることもあります。しかし、勤務条件が違う以上、そこに処遇の格差を設けなければ公平性が保てません。限定正社員の賃金水準を、無限定の社員よりも下げることをためらってはいけないと思います。

労働力人口が減少していく中で、かつての「正社員」モデルだけで人材力を展開していくには限界があります。企業の側としては、休まず長時間働き、異動にも無条件で従う従来型の正社員の方が好都合なのですが、社員が持つ様々な生活の事情を受け止めて、可能な範囲で能力を発揮してもらう仕組みが欠かせない状況になっています。そして、実は生活の様々な制約の中で、工夫して勤務を続ける社員の方が、単位時間当たり成果を上げるケースも少なくないのです。

限定正社員には、育児や介護が必要なため「自宅の近くでしか働けない」「長時間は働けない」等、正社員として働くことに何らかの制約のある人に対して「正社員」の道を開くメリットがあるとされています。

今後の企業経営においては、できる限り人材の多様性を受け入れ、活用を図っていく人材マネジメントの考え方が不可欠になると考えられます。

以上