「経営人事改革の視点」 2014年8月号 「多様な正社員・限定正社員」を活用する

厚労省における検討

日本版ホワイトカラーエグゼンプションなど、今後の労働時間規制の緩和に関する議論が厚生労働省労働政策審議会で始まりました。この中で「多様な正社員」等に関する検討も行われています。

厚生労働省は、「多様な正社員」の活用のあり方として、以下のようなケースを想定しています。

  • 「多様な正社員」とは、「限定正社員」とも呼ばれ、主に「勤務地」「職務」「勤務時間」などが限定された社員のことを指す。
  • 活用が考えられるケースとして、勤務地限定正社員については、「育児、介護等の事情により転勤が困難な者や地元に定着した就業を希望するケース」「改正労働契約法のいわゆる無期転換ルールによる転換後の受け皿として活用するケース」等。
  • 職務限定正社員については、「金融・IT などで専門性が高く特定の職能内でのプロフェッショナルとしてのキャリア形成が必要なケース」等。
  • 勤務時間限定正社員については、「育児、介護等の事情により長時間労働が困難な者が就職・就業を継続し、能力の発揮が可能なケース」等。

導入にあたっての課題

既に日本は、慢性的な人手不足の状態にあることは間違いありません。そうした中にあって、様々な制約条件を持つ「多様な正社員・限定正社員」を活用していくことが、非常に重要な戦略になると考えられます。

多様な正社員制度を導入するにあたっては、やはり仕組みづくりが欠かせません。その中で原理原則を明確にしなければなりません。

勤務地、職務権限、勤務時間など、どのような限定を可能にするかは主要な論点です。そして、例えば勤務地を限定した場合、その事業所が閉鎖になったら整理解雇の対象となるのかといった問題も出てきます。あるいは、営業という職務に限定して採用した社員の場合、営業能力がない場合に他の職種への転換はできないため、解雇せざるを得なくなります。

転換制度の問題もあります。あらたに限定正社員制度を作った場合、そちらへの転換を希望する社員が出てきますが、その転換ルールをどうするかといった点も重要です。いつでも転換できるわけでなく、年に1回そうした希望を聞いて実施するのがオーソドックスな仕組みと考えられますが、いったん限定正社員を選んだ人間が、再び非限定の社員に戻ることをどのように受け入れるかといった問題もあります。

また、処遇はきわめて重要で、これについても一定のルール化が必要です。限定することでどの程度の賃金水準にするか、別の賃金テーブルを持つのかといった内容です。実態としては、限定することで非限定正社員の8〜9割程度の水準になることが多いようですが、その考え方を明確にする必要があります。また、限定正社員の昇進・昇格をどのように考えるかも重要なポイントです。

周知とマネジメントの重要性

制度を作ればそれで万事うまくいくわけではありません。制度が社員の理解と納得を得られるよう、十分な情報提供と説明を行う必要があります。

なお、多様な働き方を円滑に進めるためには、職場における管理職のマネジメント能力の向上が不可欠であることも指摘されています。全員が同じ時間休みなく働く従来型のワークスタイルに比べて、限定正社員を含むケースでは、状況により人員フォーメーションも変化するため、高度なマネジメントが必要とされます。一方で、従来型の正社員が、休みなく長時間働くワークスタイルだった場合、その働き方を維持して良いのかという問題もあります。

近年、管理職の“プレイングマネージャー化”が進展しており、ただでさえ部下の管理にさくエネルギーが限られてきています。そうした中で、適切なマネジメントが実現するよう、管理職の能力向上対策を行うとともに、組織の見える化、業務推進プロセスの合理化を進めていく必要があります。

以上